ホセ・ルイス・クエルダ、「金の映画賞」受賞*マラガ映画祭2019 ⑫2019年04月03日 18:54

        ホセ・ルイス・クエルダの「Amanece, que no es poco」が金の映画賞

 

     

318日ピカソ美術館ホールで、ビスナガ特別賞の一つ「金の映画賞」が ホセ・ルイス・クエルダの不条理コメディAmanece, que no es poco1989)に授与されました。「こんな賞を戴けるなんて本当に厚かましく思いますが、チーム全員大喜びしています」と、カスティージャ・ラ・マンチャはアルバセテ生れ(1947)の受賞者はスピーチしました。続いて映画同様ユーモアたっぷりのスピーチで聴衆を沸かせ、シュールレアリストとしての健在ぶりを示しました。プレゼンターはジャーナリストのルイス・アレグレフェルナンド・メンデス=レイテ監督、トロフィーはクエルダ映画を熟知しているメンデス=レイテが手渡しました。本作に出演した分身術が使える酔っ払いのミゲル・レジャンや自殺願望者のギジェルモ・モンテシノスも出席、ホセ・ササトルニルカルメン・デ・リリオチュス・ランプレアベなど、重要な役を演じた出演者が既に旅立っています。それを補うかのようにクエルダの新作Tiempo después201812月公開)のプロデューサーカルメラ・マルティネス・オリアルトフェリックス・トゥセル、出演のダニエル・ペレス・プラダなどがお祝いに駆けつけました。

 

      

 (メンデス=レイテからビスナガのトロフィーを受け取るホセ・ルイス・クエルダ、318日)

 

★作家、ジャーナリスト、シネアストのルイス・アレグレ(テルエル1962)によると、「1989年の公開時にはパッとしなかった。しかし時間が経つにつれて、じわじわとカルト映画として浸透していき、毎年舞台となった町を巡り歩く観光ツアーを楽しむ<アマネシストたちAmanecistas>の出現をもたらした」。いわゆるファンクラブみたいなものができたわけです。クエルダ監督も「公開時の不評は、実際のところ落胆しなかった。それはヒットすると期待していなかったからね。公開日に映画館に偵察に出かけたら、こんな映画を見るためにお金は使いたくないと怒っているご婦人がいたんだよ」と、相変わらずジョークをとばしていた。

 

        

    (トロフィーを手に「もうときめかないし、涙も出ないんだ」という受賞者)

 

1966年以来の友人、クエルダのデビュー作Pares y nones(仮題「丁半勝負」)にも出演したフェルナンド・メンデス=レイテ(マドリード1944)監督は、文化省のオーディオビジュアル・アート協会の総ディレクター(198688)だったときのことを思い出して、彼は「この業界では最も仕事熱心な男です」と。全員に脚本が配られ読み始めるや、「そこにいた全員が、一体全体このジョークは何なんだい、と議論が始まり、それが楽しかったのを思い出します」と挨拶した。可笑しな論理のすり替えやナンセンス・ギャグあり、セリフはチグハグで繋がらない、ブラックユーモアとは違う意味不明なやり取りに役者たちは面食らったらしい。それを観に行った観客も同じだったわけですが。

 

★本作はいわゆる群像劇で誰が主役なのか、あるいは主役はいないのかどうか判然としない。酔っ払いカルメロを演じたミゲル・レジャンは、グティエレス伍長に扮したホセ・ササトルニル<ササ>が天真爛漫に動き回りながら確信していたある逸話を紹介した。彼は「本物の映画だと気づいたとき、われわれはスペインから追い出されたところにいる」と言ったそうです。舞台はスペインのどこかのはずですが、どこでもない山間の村、多分監督の生れ故郷アルバセテ周辺の村なのです。「もし自分がアルバセテで生まれていなかったら、この映画も生まれなかった」と監督も語っていました。

 

      

         (ミゲル・レジャンとホセ・ササトルニル、映画から) 

 

★こういう村に、超大国アメリカのオクラホマ大学で教鞭を執っているアントニオ・レシネス扮するテオドロが、サバティカル休暇で帰郷してくる。自慢の息子が帰ってきてルイス・シヘス扮する父親ジミーは大喜び、二人はサイドカーで旅行に出かけることにする。母親は息子が留守のあいだに父親が口うるさいと殺してしまっているが何故かお咎めなし。この変な親子が、人間が畑から生えてくるような村をぐるぐる巡るストーリーなのです。アメリカへの屈折したオブセッションも見所の一つでしょうか。映画生誕20周年記念の2009年にはアルバセテ市観光局が村おこしのため観光ツアーを企画して、クエルダ監督もサイドカーに乗って宣伝に一役買いました。30周年には「金の映画賞」が転がり込んでめでたしメデタシ、観光ツアーがあったかどうか分かりませんが、スペイン映画史に残る一作なのは間違いありません。

   

        

(オクラホマ大学教授役のアントニオ・レシネスと父親役のルイス・シヘス、映画から)

     

        

(畑から人間が生えてくる、風変わりな村です)

 

★サンセバスチャン映画祭2018でプレミアされ、12月に公開されたクエルダの新作「Tiempo después」は、どうやら受賞作と対になっているらしく、時代は9177年という超未来のアンサンブル・ドラマ、現在活躍中の芸達者が揃って出演している。カルロス・アレセス、ブランカ・スアレス、ベルト・ロメロ、ロベルト・アラモ、セクン・デ・ラ・ロサ、アントニオ・デ・ラ・トーレ、アルトゥーロ・バルス、前作にも出演したガビノ・ディエゴ、などなど。第6回フェロス賞2019コメディ部門にノミネートされたが、強敵ハビエル・フェセルの「Campeones」に軍配が上がった。

 

   

    

(中央が監督、左側はデ・ラ・トーレ)  

 

   

  (自身も出演したアンドレウ・ブエナフエンテのトーク番組で自作を語る監督)

 

★ホセ・ルイス・クエルダは寡作な映画作家です。第2作の『にぎやかな森』87)は、ゴヤ賞作品・脚本賞を受賞、監督賞は逃した。またサンセバスチャン映画祭OCIC 賞ホナラティブ・メンションを受賞するなどした。マヌエル・リバスの短編集を映画化した『蝶の舌』99)はゴヤ賞脚色賞を受賞、どちらも本邦でも公開され好評だった。しかしクエルダ・ファンの一押しはAmanece, que no es poco」ではないかと思います。アメナバルのデビュー作『テシス、次に私が殺される』(96)や『オープン・ユア・アイズ』(97)、『アザーズ』(01)などの製作を手掛け、後進の育成にも寄与している。キャリア&フィルモグラフィーについては、第6回フェロス賞2019栄誉賞を受賞したおりアップしております。

フェロス賞2019栄誉賞の記事は、コチラ20190123

 

      

          (フェロス賞2019栄誉賞のトロフィーを手にした監督)

 

Amanece, que no es poco」については、現在休眠中のCabinaブログが日本語で読める唯一の作品紹介ではないかと思います。示唆に富んだ紹介なのでご興味のある方はどうぞワープして下さい。管理人もコメントを投稿しています。コチラ

 

   http://azafran.tea-nifty.com/blog/2009/03/amanece-que-no-.html

 

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