『オフィシャル・ストーリー』にラテン金の映画賞*マラガ映画祭2019 ⑪ ― 2019年03月31日 11:53
「ラテン金の映画賞」にルイス・プエンソの『オフィシャル・ストーリー』

(養父母に扮したエクトル・アルテリオとノルマ・アレアンドロ、養女役アナリア・カストロ)
★今回から「ラテン金の映画賞」が始まり、第1回目はルイス・プエンソのアルゼンチン映画『オフィシャル・ストーリー』(La historia oficial)が選ばれました。1986年に南米大陸に初のアカデミー外国語映画賞のオスカー像をもたらした映画、さらにゴールデン・グローブ賞も受賞しており、両賞を受賞した唯一のアルゼンチン映画でもある。その他カンヌ映画祭1985審査員エキュメニカル賞、養母を演じたノルマ・アレアンドロが女優賞を受賞している。そのほか銀のコンドル賞など数々の国際映画賞を受賞しており、今回の「ラテン金の映画賞」受賞は文句なしと言えるでしょうか。アルゼンチンが次にオスカー像を手にするには2009年のフアン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』まで待たねばならなかった。
★2016年、公開30周年を記念して修復版が再上映されています。公開30年後のプレス会見で、民主化されたとはいえ軍事独裁政権(1976~83)の総括はなされていなかったから「撮影中には多くの脅迫や嫌がらせをうけた。当時4歳だった養女役のアナリア・カストロが撮影のため外出できないよう自宅を見張って妨害した」と監督は語っていた。また「脚本については、五月広場の祖母たちから貴重なデータや協力を受けた」とも語っています。有名なのは五月広場の母親たちですが、逮捕時に妊娠していた娘たちが出産後直ちに殺害されていたことが既に分かっていたから、孫捜索に切り替わっていた。『オフィシャル・ストーリー』で政府高官夫妻が養女にした子供の母親は、そういう犠牲者の一人でした。オフィシャルな歴史と現実は、往々にして一致しないものです。

(30年後の養母役ノルマ・アレアンドロ、監督、養女ガビを演じたアナリア・カストロ)
★3月21日、来マラガできなかったプエンソ監督の代理として、映画修復録音部門の責任者で、アルゼンチンの国立映画製作学校長、国立映画視聴覚芸術協会INCAA員のカルロス・アバテがビスナガのトロフィーを受け取った。彼はアルゼンチンのベテラン監督カルロス・ソリンやマルセロ・ピニェエロ、フアン・ホセ・カンパネラの録音を手掛けている。プレゼンターはマラガ・フェスティバル・プログラム委員会のメンバーの一人ミリト・トレイロ氏でした。

(カルロス・アバテとミリト・トレイロ、3月21日)
*ルイス・プエンソの代表作*
1985「La historia oficial」(『オフィシャル・ストーリー』)アルゼンチン
監督・脚本・製作、公開
1989「Old Gringo」(『私が愛したグリンゴ』)アメリカ、監督・脚本、公開
1992「La Peste」(『プレイグ』)フランス、監督、カミュの小説『ペスト』の映画化、公開
2004「La puta y la ballena」(『娼婦と鯨』)アルゼンチン=西、監督・脚本・製作、DVD
2007「XXY」(『XXY~性の意思~』)アルゼンチン、製作、監督ルシア・プエンソ、BSスカパー
(以上字幕入りで観られるもの)
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