『アナザー・デイ・オブ・ライフ』アニメーション*ラテンビート2018あれこれ ⑩ ― 2018年11月19日 20:39
(主な登場人物を入れたフランスのポスター)
★後半はラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・ネノウの『アナザー・デイ・オブ・ライフ』のCGアニメーションと実写の融合が最後を飾りました。最終回に相応しく会場から拍手が起こりました。1975年のアンゴラ内戦初期、ポーランドの報道記者リシャルト・カプシチンスキは首都ルアンダ取材に派遣される。凄惨な戦場を駆けめぐった3ヵ月の体験記録、ノンフィクション「Another Day of Life」(英語版1976刊)の映画化。当時のアンゴラは宗主国ポルトガルとの休戦協定に調印したが、現実はソ連主導のMPLAと米国主導のFNLAの対立により混迷を深めていた。ストーリー、時代背景、映画化の動機、その複雑な経緯、原作者リシャルト・カプシチンスキ、両監督フィルモグラフィーなどは既に紹介しております。
*『アナザー・デイ・オブ・ライフ』の紹介記事は、コチラ⇒2018年10月08日
*スペイン版タイトル「Un día más con vida」
「悪夢の瞬間もありましたが、最終的には求めていた作品になりました」
A: 導入部で冷戦時代の米ソの対立構図が説明されますが、少し予備知識が必要かな。分からないと楽しめないというほどではありませんが、知っていたほうがよりベター。何しろ遠い大西洋に面したアフリカの、今から40年前の内戦だから、生まれていなかった観客も多かったでしょう。
B: 高校の世界史では学ばない? 公用語が元の宗主国ポルトガルの言語、アフリカ最大のポルトガル語人口を擁している共和国です。
A: 作品の言語もポルトガル語、英語、スペイン語、ポーランド語、日本語字幕なしでは厳しい。翻訳者は大変な作業だったでしょう。YouTube予告編では英語または西語入りなどあります。
B: Toutubeでも描線の美しさは伝わってきますが、スクリーンは圧倒的、比較になりません。映画ファンと一緒に同じ空間と時間を共有しているからかもしれない。
A: いくらネットで簡単に見ることができる時代になっても、映画は映画館で観るは変わらない。デ・ラ・フエンテ監督が「観客がカプシチンスキの心の中に入り込めるように努力した」と語っていたが、それはある程度成功したのではないか。
(凄惨を極めたルアンダ)
B: 最初からアニメーションで撮ろうとしたわけではなく、結果的にそうなったと。
A: アニメ作家ではありませんからね。製作の発端は10年前、デ・ラ・フエンテと公私ともにパートナーである製作者で脚本家のアマイア・レミレスが原作を読み、二人同時に感銘を受けたこと。7年前のアンゴラ取材旅行から本格始動した。2012年にリスボンに行き、国立シネマテカを訪れた。そこで1975年当時のアンゴラで撮影された16ミリのコピーを見た。そこにカルロタが現れた。
(サンセバスチャン映画祭観客賞受賞のアマイア・レミレスとラウル・デ・ラ・フエンテ)
B: 映画ではカプシチンスキと別れた後、死が伝えられた女性革命家カルロタのことすね。
A: 死の数時間前の映像で、圧倒的な存在感があったということです。彼女を軸にして脚本が進みだした瞬間だった。「想像してみてよ、40年前には生きていた若い女性ゲリラの姿が映っていたの」とアマイア・レミレス。本作のアイデアはカルロタに負っている部分が大きいとも。
B: カルロタへのオマージュを強く印象づけられた。
(カプシチンスキとカルロタ)
A: シュールなシーンは実写よりアニメーションのほうがいいということで、ワルシャワで仕事をしていた友人を通じて原作者の故国ポーランドに打診した。最初「どうしてスペインの監督がカプシチンスキのノンフィクションをアニメ化したいのか、びっくりというかショックを受けた」とデ・ラ・フエンテ。
B: そしてヨーロッパでも有数のアニメ・スタジオPlatige Imageとコンタクトが取れ、共同監督ダミアン・ネノウとタッグを組むことになった。完成までの道程は大分長かった。
A: 配給に尽力してくれたナバラのGolem のホセチョ・モレノのように完成を見ずに鬼籍入りした関係者もいた由、彼の死は思い出しても辛い。「悪夢の瞬間がいくつもありましたが、最終的には求めていた作品になりました」とデ・ラ・フエンテ。
B: 製作国は最初はポーランドとスペインだけだった。しかしベルギー、ドイツが続き、最終的にハンガリーにも参加してもらえた。
A: ジャーナリズムとアートの境界線は消えてしまっていた。不条理な惨い現実がカプシチンスキを報道記者から作家に転身させてしまった。
B: デ・ラ・フエンテは、カプシチンスキはジャーナリストというより活動家だったと語っていますが。
A: 理想主義者だったのではないでしょうか。この作品は無名の英雄たち、カプシチンスキ、ファルスコ、ルイス・アルベルト、アルトゥル・ケイロツ、カルロタほか内戦で亡くなった多くの市民に捧げられています。これにてラテンビート2018はお開きにいたします。
*カンヌ映画祭以降の主なデータ(管理人覚え)
〇アヌーシー・アニメーション映画祭(6月12日)
〇ビオグラフィルム映画祭(伊、6月18日)
〇T-Mobil New Horizons(ポーランド、7月28日)
〇サンセバスチャン映画祭(9月22日)
〇CPH PIX(デンマーク、9月28日)
〇アニメーション・イズ・フィルムフェス(米、10月20日)
〇ストックホルム映画祭(11月7日)
〇ラテンビート(11月11日)
〇メルボルン映画祭(2019年8月)
〇第2回ヨーロッパ・アニメーションEmile賞ノミネーション
★公開:スペイン、ポーランド、ポルトガル、公開予定:フランス、イタリア、他
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