第63回バジャドリード映画祭SEMINCI 2018*結果発表 ― 2018年11月02日 14:58
作品賞はカナダ映画、スペイン語映画は鳴かず飛ばずの結果でした
★カナダのフィリップ・ルサージュ監督の「Genese」(「Genesis」)が最高賞の「金の穂」(ゴールデン・スパイク賞)、監督賞にあたるリベラ・デル・ドゥエロ賞、さらにThéodore Pellerinが男優賞と3賞を受賞しました。ロカルノ映画祭からの注目作品、モントリオール・ニューシネマ・フェス2018の作品賞受賞作品。3人のティーンエイジャーの性の目覚めをめぐる物語、過去の作品「Les démons」同様、監督の自伝的な要素を含んでいるようです。カナダといってもフランス語圏なので言語はフランス語です。
(作品賞・監督賞のトロフィーを手に喜びのフィリップ・ルサージュ監督)
(男優賞受賞のTheodore Pellerinとガールフレンド役のノエ・アビタ、映画から)
★スペイン語映画としては、『笑う故郷』(「名誉市民」)のアルゼンチン監督ガストン・ドゥプラットのコメディ「Mi obra maestra」が観客賞を受賞しました。ベネチア映画祭2018のコンペティション外で上映された作品。ブエノスアイレスにギャラリーをもつ楽天的なインチキ画商アルトゥーロ(ギジェルモ・フランセージャ)と、彼とは対照的に人づきあいが苦手な画家レンソ(ルイス・ブランドニ)の二人は竹馬の友。
(出演者に挟まれたガストン・ドゥプラット監督)
★新設された「ドゥニア・アヤソ賞」(スペイン映画部門)に『カルメン&ロラ』の監督アランチャ・エチェバリアが受賞しました。開催中のラテンビート2018にエントリーされている作品です(来日中)。ドゥニア・アヤソ(カナリア諸島ラスパルマス1961~2014)は、夫君のフェリックス・サブロソと二人三脚で映画作りをしていましたが、若くして癌に倒れた。公開には至りませんでしたが意外と映画祭等で紹介されています。『ごめん、でもルーカスは僕が好きだったんだ』(97)『チュエカタウン』(07、脚本)が東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映、『チル・アウト!』、ラテンビート2009でも『ヌード狂時代/S指定』が上映されている。社会の暗部を炙り出すシリアス・コメディ映画が得意だった。アヤソ=サブロソ映画の常連だったカンデラ・ペーニャやアルベルト・サン・フアン、ジェラルディン・チャップリンなどを起用して撮った「La isla interior」(09)が遺作となった。
(アランチャ・エチェバリアと『カルメン&ロラ』のポスター)
(ラテンビート2018に来日したアランチャ・エチェバリア監督、
左はプログラミング・ディレクターのアルベルト・カレロ氏)
★名誉賞受賞者は、イランのモハマド・ラスロフ監督、ドイツのマルガレーテ・フォン・トロッタ監督、スペインからはイシアル・ボリャイン監督、フアン・アントニオ・バヨナ監督、俳優のエドゥアルド・フェルナンデスの5名。
(中央がJ.A. バヨナ、左側フェルナンデス、ボリャイン、右側フォン・トロッタ、ラスロフ)
(トロフィーを手に登壇した名誉賞受賞者たち)
★モハマド・ラスロフMohamad Rasoulof 監督は、カンヌ映画祭「ある視点」の常連、なかでカンヌ2017の「Lerd (A Man of Integrity)」が作品賞を受賞、第62回SEMINCIでは監督賞を受賞した。全て未公開のようですが、第12回東京フィルメックスに『グッドバイ』がコンペティション部門に正式出品されている。今回は来バジャドリードはなく、ビデオでの参加だったようです。
★マルガレーテ・フォン・トロッタ Margarethe von Trotta(ベルリン1944)は、ジャーマン・ニューシネマのリーダーの一人、『ローザ・ルクセンブルク』(西ドイツ86)はマルクス主義者ローザ・ルクセンブルクの伝記映画、翌年公開された。ほか東京国際映画祭2012コンペティション部門に出品された後、公開された『ハンナ・アーレント』が代表作、後者は第57回SEMINCIでシルバー・スパイク賞を受賞している。
★スペイン人シネアストについては、既に当ブログではご紹介済みにつき割愛します。下の写真はカジェタナ・ギジェン・クエルボの司会で国営テレビ出演のスペインの3人。
(左から、ボリャイン、バヨナ、ギジェン・クエルボ、フェルナンデス)
★前回アップしたオープニング作品だったミゲル・アンヘル・ビバスの「Tu hijo」や、アルゼンチンのパブロ・トラペロの「La Quietud」(フランス合作)は残念でした。
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