アスガー・ファルハディの「エブリバディ・ノウズ」*カンヌ映画祭2018 ③2018年05月08日 17:53

            イランの監督が撮っても「Everybody Knows」はスペイン映画です

    

    

 (ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を採用した第71回カンヌ映画祭ポスター)

 

★「批評家週間」にはポルトガル映画だけでスペイン語映画はノミネートなしです。コンペティションのオープニング作品Everybody Knowsは、イランの監督アスガー・ファルハディがスペインの大物俳優を起用して、言語はスペイン語、スペイン、フランス、イタリアが製作国になって約10,000,000ユーロで製作、スペイン語題はTodos lo sabenです。アカデミー外国語映画賞2冠の監督がスペイン語で撮るということで、2016年の製作発表時から鳴り物入りで逐一報道され話題を提供してきた。監督はカンヌ映画祭の常連でもあるからノミネーションは確実視されていたが、オープニング作品とは驚きました。ジャン=リュック・ゴダールの「The Image Book」を差し置いて選ばれたわけですから。今年のカンヌ映画祭ポスターは彼の『気狂いピエロ』です。スペイン映画が選ばれるのは、2009年アルモドバルの『バッド・エデュケーション』以来だそうです。

 

★カンヌ映画祭は英語題が基本ですが、一応スペイン映画なので西語タイトルにします(IMDbを採用)。まだ日本語データが揃っておりませんので、情報源は西語、英語のウイキペディアです。IMDbではペネロペ・クルスが扮するヒロインの名前が、キャスト欄ではラウラ、ストーリーラインではカロリナとチグハグですが、ウイキペディアと予告編を見る限りではラウラなのでこちらを採用します。

 

          

              (スペイン語タイトル採用のポスター)

 

Todos lo sabenEverybody Knows2018

製作:Memento Films(仏)/ Morena Films(西)/ Lucky Red(伊)/ El Deseo / France 3 Cinéma

監督・脚本:アスガーファルハディ(イラン)

撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ(スペイン)

音楽:アルベルト・イグレシアス(スペイン)

編集:ハイデー・サフィヤリ(イラン、『別離』『セールスマン』)

衣装デザイン:ソニア・グランデ(スペイン、『アザーズ』『ミッドナイト・イン・パリ』)

メイクアップ:アナ・ロサノ、マリロ・オスナ

プロダクション・デザイン:マリア・クララ・ノタリ

プロダクション・マネージメント:アルバロ・サンチェス・ブストス

製作者:アレバロ・ロンゴリア(スペイン)、アレクサンドル・マレ=ギ(フランス)、アンドレア・オキピンティ(イタリア)、他

 

データ:製作国スペイン=フランス=イタリア、スペイン語、2018年、サイコ・スリラー、130分、撮影地マドリード北方トーレラグナ、グアダラハラ、撮影期間2017821日クランクイン、12月まで。カンヌ映画祭2018オープニング作品。

 

キャスト:ペネロペ・クルス(ラウラ)、ハビエル・バルデム(ラウラ元夫パコ)、リカルド・ダリン(ラウラの夫アレハンドロ)、バルバラ・レニー(パコの妻ビクトリア)、インマ・クエスタ(ラウラの妹)、エドゥアルド・フェルナンデス、エルビラ・ミンゲス、ハイメ・ロレンソ、ロヘル・カサマジョール(ラウラ妹の花婿)、ラモン・バレア(ラウラの父)、サラ・サロモ、カルラ・サンプラ、セルヒオ・カステジャーノス、ネイジャ・ロハス、パコ・パストル・ゴメス(ガブリエル)、他

 

物語:ブエノスアイレスに住んでいるラウラは、妹の結婚式に出席するためアルゼンチンの夫アレハンドロや子供たちと連れ立って、生れ故郷であるマドリード北方の小さな町に帰郷する。ラウラの元夫であるパコとその妻ビクトリアも出席するという。しかし、あることを切っかけに予期せぬ突発事件が起き、巻き込まれた全員の人生を徹底的に変えてしまうことになる。過去の秘密が次第に明らかになっていく。

 

★本作の舞台となる小さな町は、マドリード北方に位置するトーレラグナという、現在人口5000人に満たない町です。町中央の広場プラサ・マジョールに面して「サンタ・マリア・マグダレナ教会」があり、映画にも出てくる教会はここではないかと思います。他には市民戦争で破壊された建造物が文化遺産としてそのまま残されているようです。こんな小さな町で事件が起きればどうなるか? 秘密は誰も口にしないだけで「エブリバディ・ノウズ」である。作中のセリフ「Todos lo saben」がタイトルになっている。

 

      

               (再会した元夫婦、ラウラとパコ)

 

★ヒロイン役のペネロペ・クルス、ゴヤ賞2018で主演女優賞にノミネートされて来マドリードしていたとき、本作の撮影中のエピソードを語っていた。「ファルハディ(監督)から、私を主役にした脚本を書いている、という電話を貰ったの・・・アスガーは感性がとても特別な監督で、例えば私がパニックの発作を起こして救急車に乗るシーンがあった。撮影が済んで救急車から下りてくると私を抱きしめて、別のシーンも撮りたいと頼むの。やり直すとそれが気に入った。私のキャリアの中でも非常に難しい登場人物でした」。気に入らないと不機嫌になって怒鳴る監督もいるからね。ハビエル・バルデムとの結婚10周年を迎えたクルス、7歳と4歳の子供の母親、親しい友人たちは「女優として女性として、今が最も充実している」と口を揃える。間もなく開幕するカンヌ初日、最も輝く女性は彼女でしょう。

 

          

               (44歳になったペネロペ・クルス)

 

アスガー・ファルハディフィルモグラフィーは、劇場公開作品では2009『彼女が消えた浜辺』2011『別離』2013『ある過去の行方』2016『セールスマン』4作でしょうか。タイトルがネタバレしていて頂けないが、個人的には最初の『彼女が~』には衝撃を受けた。厳しい検閲を掻い潜ってイランでもこんな素晴らしい映画が撮れるのだという驚きでした。アカデミー外国語映画賞を受賞した『別離』や『セールスマン』も悪くないが、『彼女が~』ほどではなかった。家庭のもめごとを軸にして、社会全体の闇を炙り出すテーマが大好きな監督、今度はスペインの何が炙り出されるのでしょうか。

 

         

            (本作撮影中のアスガー・ファルハディ監督)

 

★主なキャスト以外では、リカルド・ダリン(『サミット』『瞳の奥の秘密』、)バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』『家族のように』)、ラウラの妹役インマ・クエスタ(『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』『ブランカニエベス』)、その結婚相手になるロヘル・カサマジョール(『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』)、エドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』)、ハイメ・ロレンテNetflix配信TVシリーズ『ペーパー・ハウス』)、エルビラ・ミンゲス(『暴走車 ランナウェイ・カー』『時間切れの愛』)、ブドウ栽培をしているラウラの父役ラモン・バレア(『ブランカニエベス』Netflix配信『となりのテロリスト』)など、演技派のベテラン、新人を取り揃えています。

  

           

     (ラウラと夫アレハンドロ)

     

        

        (パコと妻ビクトリア、後ろ向きのバルバラ・レニーで残念)

 

      

                        (ラウラと妹役のインマ・クエスタ)

     

★フランスのプロデューサーのアレクサンドル・マレ=は、『ある過去の行方』と『セールスマン』を手掛けており、俳優としても活躍中のミラノ出身のアンドレア・オキピンティは、『イル・ディーヴォ』、『少年と自転車』、『海を飛ぶ夢』など。アルバロ・ロンゴリアは、フリオ・メデム映画を手掛ている製作者で、クルスが乳がん患者を演じた『あなたのママになるために』(「Ma ma」)、『ローマの部屋』、『セブン・デイズ・イン・ハバナ』、古くはサウラの『イベリア』などをプロデュースしている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、サウラ、今は亡きビガス・ルナ、アルモドバルを撮っているベテラン、音楽のアルベルト・イグレシアスは毎年ゴヤ賞にノミネートされ、ゴヤ胸像のコレクター、やはりお金が掛かっているなぁという印象です。

 

            

       (左から、バルデム、ファルハディ監督、ダリン、フェルナンデス)

 

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