『ナチュラルウーマン』 ほか、お薦め公開作品 ― 2018年02月12日 18:09
フェルナンド・レオン・デ・アラノア『ロープ 戦場の生命線』が公開
★フェルナンド・レオン・デ・アラノア「A Perfect Day」(「Un dia perfecto」2015)が『ロープ 戦場の生命線』という邦題で既に劇場公開されています。主な言語は英語ですがゴヤ賞2016の最優秀脚色賞を受賞した作品です。パウラ・ファリアスの小説 ”Dejarse llover”(仮訳「雨は降ったままで」)の映画化です。オリジナル・タイトルの“A perfect Day” は、1995年のボスニア紛争中に作られたブルックリン出身のルー・リード(1942~2013)の歌詞から採られているそうです。監督の最新作「Loving Pablo」に出演したハビエル・バルデムとペネロペ・クルスの二人は、ゴヤ賞2018の主演男優・女優賞にノミネートされました。こちらも英語映画ですから公開されるでしょうか。
★カンヌ映画祭と併催される「監督週間」でワールド・プレミアされた折りと、ゴヤ賞2016でノミネートされたときに作品紹介をしております。1995年、停戦直後のバルカン半島の紛争地が舞台、国際支援活動家 5人の動機もさまざまです。モラトリアムの冴えない中年男ティム・ロビンス、もう嫌気がさしているベニチオ・デル・トロ、デル・トロの元カノオルガ・キュリレンコ、住民の役に立ちたいメラニー・ティエリー、早く終わりにしたいフェジャ・ストゥカンと、キャスト陣も個性豊かです。放り込まれた死体で飲めなくなった井戸と1本のロープをめぐって奔走する。目立ちたがり屋だが当てにできない国連職員をからませて、可笑しくても笑えない戦争コメディドラマ。
*「A Perfect Day」の作品紹介・監督キャリアの記事は、コチラ⇒2016年1月14日
(死体が投げ込まれている井戸を覗く5人の活動家)
◎公開2018年2月10日、新宿武蔵野館、渋谷シネパレス、他。
ゴヤ賞2018イベロアメリカ映画賞受賞の『ナチュラルウーマン』
★これから公開が予定されている映画がセバスチャン・レリオの『ナチュラルウーマン』、自身トランスジェンダーのダニエラ・ベガがヒロインのマリナ・ビダルを演じる。既に詳細な公式サイトも立ち上がっております。3月4日に結果発表のあるアカデミー賞外国語映画賞5作品に踏みとどまることができました。チリとしてはパブロ・ララインの『No』以来です。受賞すれば初めてとなります。製作会社はラライン兄弟の「Fabula」が中心、『No』のときの経験を生かしてプロモーションに力を入れていることでしょうが、対抗馬には『ザ・スクエア 思いやりの聖域』など話題作が顔を揃えています。当ブログでは原題の「Una mujer fantástica」でご紹介しています。
(ダニエラ・ベガ、映画から)
★監督とベガはゴヤ賞のガラ(2月3日)に出席してトロフィーを受け取ったばかりですが、2月5日に行われたアカデミー賞の候補者招待昼食会にも姿を見せていました。実話を元にしたスピールバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に出演、主演女優賞ノミネートのメリル・ストリープと歓談しているフォトなども配信されていました。今年はフェミニズムが脚光を浴びているから、もしかしたら・・・期待したい。
*『ナチュラルウーマン』(「Una mujer fantástica」)の主な記事は、コチラ⇒2017年1月26日
(ダニエラ・ベガとレリオ監督、2月3日のゴヤ賞ガラにて)
◎公開2018年2月24日、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、順次全国ロードショー。
*映画新情報*
★ルクレシア・マルテルの『サマ』が、ロッテルダム映画祭2018(1月24日~2月4日)の優れたオランダとの共同製作作品に贈られるKNF 賞を受賞しました。ベネチア映画祭2017でワールドプレミアして以来、出品した国際映画祭は多数に上りますが、審査員の意見が割れるのか、なかなか受賞には結びつかないようです。
★ゴヤ賞助演女優賞にノミネートされ、授賞式には出席するとアナウンスされながら、次回作撮影のためパスしたロラ・ドゥエニャスですが、次回作のアウトラインが見えてきました。短編作家として活躍しているセリア・リコ・クラベリーノの長編デビュー作「Viaje alrededor del cuarto de una madre」です。同じゴヤ賞助演女優賞にノミネートされたアンナ・カスティーリョと母娘を演じる。他の共演者は助演女優賞受賞のアデルファ・カルボ、ペドロ・カサブランクなど実力者が脇を固めています。
(左から、アンナ・カスティーリョ、監督、ロラ・ドゥエニャス)
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