サンティアゴ・エステベスのデビュー作*サンセバスチャン映画祭2017 ⑨ ― 2017年09月17日 10:00
「ホライズンズ・ラティノ」はアルゼンチン映画が花ざかり
★ラテンアメリカ諸国に関していえば、アルゼンチンは映画先進国、今年もノミネーション12作のうち4作、合作を含めると半数以上の7作になります。サンティアゴ・エステベスの長編デビュー作 “La educación del Rey” は、「Cine en Construcción 30」(サンセバスチャン映画祭SSIFF2016)の受賞、他に「Cine en Construcción 30」では「CACI-Ibermedia TV」賞*も受賞しています。定年退職したばかりの元警備員が偶然遭遇してしまった強盗初犯の若者の自立を手助けするというサスペンス仕立てのドラマです。
*CACI(Conferencia de Autoridades Cinematográficas Iberoamericanas)イベロアメリカ映画作品会議。

“La educación del Rey” 2017
製作:13 Conejos
監督・編集:サンティアゴ・エステベス
脚本(共):サンティアゴ・エステベス、フアン・マヌエル・ボンドン
撮影:セシリア・マドルノ
美術:アレハンドラ・マスカレーニョ
録音;パトリシア・ミラネシ
視覚効果:ラモン・ダサ、ビクトル・パラシオス・ロペス
音楽:マリオ・ガルバン、マルティン・サンチェス
助監督:エセキエル・ピエリ
プロデューサー:サンティアゴ・エステベス、(エグゼクティブ)バルバラ・エレーラ、
(アシスタント)セシリア・マドルノ、ダマリス・レンドン
データ:アルゼンチン、スペイン語、2017年、撮影地メンドサ、2015年10月。「Cine en Construcción 30」出品作品(作品賞受賞)、「CACI-Ibermedia TV」賞受賞、サンセバスチャン映画祭2017「ホライズンズ・ラティノ」正式出品、フランス公開2017年11月22日予定
キャスト:ヘルマン・デ・シルバ(カルロス・バルガス)、マティアス・エンシナス(レイナルド・ガリンデス、綽名レイ)、エステバン・ラモチェ(ビエイテス)、ウォルター・ヤコブ(アランシビア)、ホルヘ・プラド、マルティン・アロージョ、エレナ・シュネル(カルロス妻)、マリオ・ハラ、マウリシオ・ミネティ、マルセロ・ラセルナ、他
プロット:16歳のレイナルド・ガリンデス、綽名はレイと警備会社を定年退職したばかりのカルロス・バルガスの物語。レイは仲間と初めて強盗に入るが見つかり警察に追われ逃走する。道路を走り塀を乗り越え飛びおりた先がバルガス家の中庭だった。バルガスはレイにある提案をする。飛び降りたときに壊した庭を修繕するなら警察に引き渡さないと。それが始まりだった。老いた元ガードマンは、古くからの言い伝えに倣って若者の<君主教育>を始める。しかしこの協定は、レイナルドが犯した未解決の問題に近づこうとしたとき、二人の信頼関係に亀裂が走るだろう。
一躍スターになったメンドサ生れの新人マティアス・エンシナス
★「君主教育」というタイトルは、レイナルドReynaldoの綽名レイReyと王reyを掛けている。タイトルのRey が大文字と小文字の2通りある理由です。当ブログではIMDbを採用しました。同じキャストでTVミニ・シリーズ化(8話)されて、お茶の間にも登場することになった。レイナルド・ガリンデス役のマティアス・エンシナスはメンドサ生れのニューフェイス、撮影時には主人公とほぼ同じ17歳だった。TVドラ化されたことでメンドサでは有名になったということです。

(マティアス・エンシナス、映画から)
★カルロス・バルガス役のヘルマン・デ・シルバは、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(第5話「愚息」)の庭師役を演じたベテラン。資産家の愚息の轢逃げ犯の身代わりを50万ドルで請け負うが、値段を釣り上げて資産家を逆に強請るという、笑うに笑えないコメディだった。本作でアルゼンチン映画アカデミー2014の助演男優賞受賞している。他にカンヌやサンセバスチャン映画祭2011の「ホライズンズ・ラティノ」作品賞を受賞したパブロ・ジョルジェッリの “Las acacias” で主役の長距離トラック・ドライバーを演じて、アルゼンチン映画アカデミー新人男優賞やコンドル賞にノミネートされている。

(レイナルドに<君主教育>をするカルロス・バルガス、映画から)
★今回あまり出番はなさそうなエステバン・ラモチェは、サンティアゴ・ミトレのデビュー作『エストゥディアンテ』の政治活動に目覚めていく主役を演じてカルタヘナ映画祭男優賞をもらった。カンヌ映画祭2015併催「批評家週間」のグランプリ受賞作品『パウリーナ』ではパウリーナの恋人役、前回アップしたアドリアン・ビニエスの “El 5 de Talleres” では主役を演じた。ホルヘ・プラドは、映画、舞台、TVと活躍しているベテランのようです。アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー』やフランシスコ・マルケス&アンドレア・テスタの “La larga noche de Francisco Sanctis” に脇役で出演している。

(エステバン・ラモチェとヘルマン・デ・シルバに指示を与える監督、撮影2015年10月)

(ホルヘ・プラド、右はマティアス・エンシナス、TVミニシリーズから)
★ウォルター・ヤコブは、1975年ブエノスアイレス生れ、主に舞台俳優、演出家として活躍している。パブロ・トラペロのブエノスアイレスのスラム街を舞台にした社会派ドラマ『ホワイト・エレファント』に出演している。リカルド・ダリンやベルギーの若手ジェレミー・レニエ、トラペロ夫人のマルティナ・グスマンなどと共演した。マルセロ・ラセルナやエレナ・シュネルも舞台俳優らしく二人は同じ舞台に立っている演劇仲間。

(右ウォルター・ヤコブ、ジェレミー・レニエと共演した『ホワイト・エレファント』から)
★サンティアゴ・エステベスはメンドサ生れ、監督、脚本家、編集者。本作が長編デビュー作ですが、編集者としては長いキャリアの持ち主。ベテランを揃えられたのもこのキャリアの賜物かもしれない。オムニバス映画『セブン・デイズ・イン・ハバナ』(12)のパブロ・トラペロが監督した「ジャムセッション/火曜日」を手掛けている。2011年、エステバン・ラモチェを起用して短編 “Los crimenes”(19分)、ほか ”Un sueño recurrente”(13、22分)の2作がある。

(本作撮影中の監督、左側)

(エセキエル・ピエリと監督、SSIFF2016「Cine en Construcción 30」にて)
*『人生スイッチ』の主な記事は、コチラ⇒2015年7月29日
*『パウリーナ』の主な記事は、コチラ⇒2015年5月21日
*『キリング・ファミリー 殺し合う一家』の記事は、コチラ⇒2017年4月9日
* “La larga noche de Francisco Sanctis” の記事は、コチラ⇒2016年5月11日
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2017/09/17/8678330/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。