アドリアン・ビニエスの第3作 "Las olas" *サンセバスチャン映画祭2017 ⑧ ― 2017年09月13日 17:24
「ホライズンズ・ラティノ」にアドリアン・ビニエスの第3作
★アドリアン・ビニエスは、ベルリン映画祭2009でデビュー作 “Gigante” がいきなり銀熊賞、新人監督賞、さらにはアルフレッド・バウアー賞のトリプル受賞、一躍ベルリンの寵児となった監督。ラテンビート2010で『大男の秘め事』の邦題で上映されました。今回ノミネーションされた “Las olas” は、昨年の「Cine en Construcción 30」出品作品、エントリーされた6作のうち4作が今年の「ホライズンズ・ラティノ」にノミネートされています。仕事に疲れ果てた中年男アルフォンソが海の中で出会う過去がメランコリックに語られる。「Cine en Construcción」は、ラテンアメリカ諸国の映画振興のために年2回開催され、第30回が2016年9月のサンセバスチャン映画祭、第31回が2017年3月のトゥールーズ映画祭に出品された作品。
“Las olas” (“The Waves”)2017
製作:Mutante Cine(ウルグアイ)/ El Campo Cine(アルゼンチン)
監督・脚本・音楽:アドリアン・ビニエス
撮影:ニコラス・ソト、ヘルマン・レオン
編集:パブロ・リエラ、フェルナンド・エプステイン(『ウィスキー』)
録音:フランシスコ・リッジ、マルティン・スカグリア
助監督:サンティアゴ・トゥレルTurell
製作者:アグスティナ・チアリノ、ニコラス・Avruj
データ:ウルグアイ=アルゼンチン、スペイン語、2017年、ドラマ、87分、撮影地モンテビデオ、2016年3月クランクイン、「Cine en Construcción 30」参加作品、サンセバスチャン映画祭2017「ホライズンズ・ラティノ」正式出品、ウルグアイ公開2018年前期予定。
キャスト:アルフォンソ・Tort(アルフォンソ)、フリエタ・ジルベルベルグ、カルロス・リサルディ、ファビアナ・チャルロ、ビクトリア・ホルヘ、他
プロット:アルフォンソは疲れはてる仕事が終わるとビーチに出かける。海に潜って泳ぐ。海から浮き上がると、5年前に家族と一緒に夏を過ごした別のビーチにいることと気づく。これが素晴らしい旅の始まりだった。彼の人生に沿ってさまざまな夏休み、湯治場がメモランダムに出現する。両親と過ごした子供時代、別れた妻と過ごした神秘的な島、友達と一緒のティーンエージャー時代、マレーシアの海賊ごっこ、2年続けて同じ場所でそれぞれ別の恋人とキャンプしたことが、ノスタルジックにメランコリックに彼の孤独が語られる。

(ビーチに向かうアルフォンソ?)
ノスタルジーとアナクロニズムが横溢する中年男の孤独
★テイスト的には『大男の秘め事』に近いが、デビュー作にあったスリリングな緊張感は薄れている印象です。アドリアン・ビニエスは、ブエノスアイレス生れのアルゼンチン人ですが、ウルグアイのモンテビデオを本拠地にしている。小国ウルグアイの映画市場はアルゼンチンとは比較にならないほど小さく、彼のようなシネアストは珍しい。本作は上記したように「Cine en Construcción 30」の参加作品、その時のストーリーとは若干違っているようです。「素晴らしい旅の始まり」は、アルフォンソが11歳の子供のときで、両親が岸辺から彼に戻ってくるよう呼んでいるシーンだった。アルフォンソは監督と同世代の38歳から40歳、時代は1985年から2012年に設定されている。大人の体形と変わらないアルフォンソが子供を演じるわけで、そのアンバランスが可笑しみを醸しだしているのでしょうか。
★アドリアン・ビニエスAdrian Biniezは、1974年ブエノスアイレス州のレメディオス・デ・エスカラダ生れ、監督、脚本家、俳優、現在はウルグアイのモンテビデオ在住。2006年、短編デビュー作 “8 horas” でブエノスアイレス国際インディペンデントSAFICIで1等賞を取る。『大男の秘め事』がベルリン映画祭2009銀熊賞・新人監督賞・アルフレッド・バウアー賞を受賞、他サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」の作品賞を受賞した。サッカー選手をテーマにした長編第2作 “El 5 de Talleres” が、ベネチア映画祭2014「第11回ベネチア・デイズ」部門で上映、他ロッテルダム、ヒホン、マル・デル・プラタ、トライベッカ、各映画祭に出品された。第3作目が本作である。俳優としては初めて公開されたウルグアイ映画としても話題を呼んだ『ウィスキー』(04、フアン・パブロ・レベージャ&パプロ・ストール)などに脇役で出演している。

(アドリアン・ビニエス監督)

(アグスティナ・チアリノ、監督、ニコラス・Avruj、「Cine en Construcción 30」にて)
★キャストのうちアルフォンソ役のアルフォンソ・Tortは、2001年『ウィスキー』の監督コンビのデビュー作 “25 Watts” で初出演、モンテビデオの3人のストリート・ヤンガーの1日を描いたもの、若者の1人を演じた。『ウィスキー』にもベルボーイ役で出演、イスラエル・アドリアン・カエタノの “Crónica de una fuga”(06アルゼンチン)、主役を演じた”Capital (Todo el mundo va a Buenos Aiires)”(07アルゼンチン)、他ビニエス監督の “El 5 de Talleres” にも出ている。今作には今度共演するアルゼンチンのフリエタ・ジルベルベルグも出演している。ジルベルベルグは、『ニーニャ・サンタ』でデビュー、ディエゴ・レルマンの『隠された瞳』、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』、ダニエル・ブルマンの “El rey del Once” などで当ブログに登場しています。カルロス・リサルディとファビアナ・チャルロは、『大男の秘め事』に出演している。監督は同じメンバーを起用するタイプなのかもしれない。

(監督は親友だと語る、アルフォンソ・Tort、2015年5月)


(フリエタ・ジルベルベルグ、“El 5 de Talleres” から)
*『人生スイッチ』の記事は、コチラ⇒2015年7月29日
* “El rey del Once” の記事は、コチラ⇒2016年8月29日
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2017/09/13/8676194/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。