マヌエル・マルティン・クエンカ*サンセバスチャン映画祭2017 ④2017年08月31日 15:11

   オフィシャル・セレクション第1弾、マルティン・クエンカの El autor

 

オフィシャル・セレクションの第1弾として、賞に絡みそうなマヌエル・マルティン・クエンカの第5 El autor のご紹介。当ブログでは前作『カニバル』(2013)と、当映画祭2005オフィシャル・セレクション部門に正式出品された2作目『不遇』をアップしておりますが、コメディ要素たっぴりの最新作が一番観客にも受け入れやすいのではないかと思っています。『カニバル』は批評家と観客の乖離があり過ぎました。本作はハビエル・セルカスのデビュー作 El móvil 1987、仮題「動機」)の映画化、ワーキング・タイトルはこちらでした。ハビエル・セルカス(1964、カセレス)は、国際的な成功を収めた『サラミスの兵士たち』(01、邦訳08)の著者として専ら知られている。これはダビ・トゥルエバが、2003年に映画化して話題になりました。大著『2666』で世界を驚かしたロベルト・ボラーニョとも接点のある作家です。

 

 

            (ワーキング・タイトルのポスター)

 

 El autorThe Mobile2017

製作:Icónica Producciones / La Loma Blanca P.C. / Alebrije Cine y Video / Canal Sur Televisión 他多数

監督:マヌエル・マルティン・クエンカ

共同脚本:マヌエル・マルティン・クエンカ、アレハンドロ・エルナンデス、

  ハビエル・セルカスの小説 El móvil の映画化

撮影:パウ・エステベ・ビルバ(『カニバル』『不遇』)

音楽:ホセ・ルイス・ペラレス

編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド

美術:ソニア・ノリャ

録音:ダニエル・デ・サヤス

衣装デザイン:ペドロ・モレノ、エステル・バケロ

メイク&ヘアー:アナベル・ベアト(メイクアップ)、ラファエル・モラ(ヘアー)

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラーノ

プロダクション・マネージメント:エルネスト・チャオ

製作者:モニカ・ロサーノ、ダビ・ナランホ、ゴンサロ・サラサル・シンプソン、ホセ・ノリャ(エグゼクティブ)、マヌエル・マルティン・クエンカ(共)

 

データ:スペイン=メキシコ、スペイン語、2017年、コメディ・ドラマ、20169月クランクイン、撮影地セビーリャ、他。トロント映画祭2017スペシャル・プレゼンテーション部門出品、サンセバスチャン映画祭オフィシャル・セレクション出品、スペイン配給Filmax、スペイン公開1117

 

キャスト:ハビエル・グティエレス(アルバロ)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(フアン)、マリア・レオン(アマンダ)、テノッチ・ウエルタ(エンリケ)、アドリアナ・パス(イレネ)、アデルファ・カルボ(管理人)、ドミ・デル・ポスティゴ(エル・マヌ)、ラファエル・テジェス(セニョール・モンテロ)、ミゲル・アンヘル・ルケ(警官)、カルメロ・ムニョス・アダメ、他

 

プロット:アルバロはセビーリャの公証人事務所で書記として働いているが、人生は灰色に塗りつぶされている。純文学の作家になるのが夢だが、彼の小説は気取っているうえに退屈、失敗続きである。なかなか面白いアイディアが浮かばない、才能も想像力も枯渇しているからだ。彼とは対照的に、妻のアマンダは大地に根を張り、作家になろうなどとは夢にも思わないが、皮肉にも彼女はベストセラー作家になってしまった。今や二人の別居は避けられそうにない。そこで小説の基礎を研究、小説作法の教師をしているフアンに教えを請うことにする。あるときアルバロは、フィクションとは現実に立脚していなければならないことに気づいた。フィクションを超えたリアリティーある物語を創作するために、隣人や友人たちを操りはじめるが・・・

 

     

 

 キャスト

★主役アルバロ役のハビエル・グティエレスは、今回コンペティション外ですが La peste がノミネートされたアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』や、イシアル・ボリャインの『オリーブの樹』、今年春に公開されたイニャキ・ドロンソロの『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』などに出演して知名度は上がっている。小説の書き方を伝授する先生フアンのアントニオ・デ・ラ・トーレは、しばしば登場してもらっている。 

 

(執筆中のアルバロ)

   

 (アルバロとフアン先生)

               

★アマンダ役のマリア・レオンは、ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』や兄パコ・レオンのコメディ「カルミナ」シリーズなどでご紹介していますが、久しぶりのブログ登場なのでおさらいしておきます。1984年セビーリャ生れ監督パコ・レオンは実兄TVシリーズSMS, sin miedo a soñar”(200607)でデビュー、フェルナンド・ゴンサレス・モリナのFuga de cerebros”(09)のチョイ役で映画デビュー。大きく飛躍したのがベニト・サンブラノのLa voz dormida11『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』)、本作でゴヤ賞2012新人女優賞を受賞した。スペイン内戦後、反フランコ活動をして収監されていた姉(インマ・クエスタ)が刑務所内で出産した姪を育てる妹に扮した。他にシネマ・ライターズ・サークル賞新人女優賞、サンセバスチャン映画祭2011最優秀女優賞、スペイン俳優組合賞などを受賞、フォルケ賞にもノミネーションされた。母カルミナと兄パコの三人で5万ユーロで撮ったCarmina o revienta12)でゴヤ賞2013助演女優賞ノミネーション、カルミナ第2Carmina y aménでフェロス賞2015助演にもノミネートされた。ベレン・マシアスのMarsella14では、ゴヤ賞とシネマ・ライターズ・サークル主演女優にノミネートされ

 

   

                (フアン先生とアマンダ)

 

★エンリケ役のテノッチ・ウエルタはキャリー・フクナガの『闇の列車 光の旅』やパトリシア・リヘンの『チリ33人 希望の軌跡』などに出演、イレネ役のアドリアナ・パスは、カルロス・キュアロンの『ルドとクルシ』や東京国際映画祭2013で上映されたアーロン・フェルナンデスの『エンプティ・アワーズ』で主役を演じている。共にメキシコの俳優です。ラファエル・テジェスはセビーリャ生れ、管理人のアデルファ・カルボはマラガ生れ、二人ともアンダルシアのことは知り尽くしている。

 

アドリアナ・パスは、1980年メキシコ・シティ生れ。16歳で舞台デビュー、メキシコ自治大学文学哲学部で劇作法と演劇を学ぶ。映画修業のため一時期スペイン、ポルトガルに滞在、メキシコに帰国後、キューバのロス・バニョス映画学校で脚本を学。女優ではなく監督、脚本家志望だったらしい。在学中よりセミプロとして舞台に立つ。映画デビューはセサル・アリオシャのTodos los besos07)、これはメキシコ・シティ国際現代映画祭、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭にも出品された。カルロス・キュアロンの『ルドとクルシ』(09)にディエゴ・ルナの妻役で出演、翌年のアリエル賞共演女優賞にノミネートされた。そのほか代表作にアリエル賞2010を総なめにしたカルロス・カレラのコメディEl traspatio、アントニオ・セラーノのMorelos12)、アンドレス・クラリオンドのデビュー作Hilda12『エンプティ・アワーズ』(13)など。役柄によって美しさが変化する女優として定評があ理論派、演技派の女優。

 

   

        (撮影中のハビエル・グティエレス、監督、アドリアナ・パス)

  

 スタッフ

マヌエル・マルティン・クエンカ1964年スペイン南部アルメリアのエル・エヒド生れ、監督、脚本家、製作者。グラナダ大学でスペイン哲学を学び、1989年マドリードのコンプルテンセ大学情報科学を卒業する。在学中の1988年から正式の監督アシスタントとして働き始め、マリアノ・バロッソ(1959)、ホセ・ルイス・クエルダ(1947)、イシアル・ボリャイン(1967)、ホセ・ルイス・ボラウ(1929)などとコラボする。短編、ドキュメンタリーなどを手掛けた後、2003年長編デビュー作 La fraqueza del borchevique がサンセバスチャン映画祭のオフィシャル・セレクションにノミネートされ高い評価を受けた。翌年のゴヤ賞2004では、脚色賞を受賞、主演のマリア・バルベルデが新人女優賞を受賞した。

 

      

            (撮影中の監督とハビエル・グティエレス)

 

★第2 Mala temporadas(『不遇』)もサンセバスチャン映画祭2005に正式出品、数々のノミネーションや賞を果たした。2010 La mitad de Oscar はトロント映画祭だったが、2013『カニバル』2014524日公開)は再びサンセバスチャン映画祭に戻って正式出品された。パウ・エステベ・ビルバが撮影賞(銀貝賞)を受賞、ゴヤ賞もゲットした。主役のアントニオ・デ・ラ・トーレが第1回フェロス賞の主演男優賞を受賞した作品。監督とサンセバスチャンは相性がよく、新作に期待が寄せられている。

 

2004年に制作会社「La Loma Blanca producciones Cinematograficas」を設立、第3 La mitad de Oscar

から製作している。2009年には出版社「Lagartos Editores」を設立、若いアンダルシアの作家育成に尽力している他、映画関係書籍のコレクション、過去の映画テキストを刊行している。より詳しい監督キャリア&フィルモグラフィーについては『不遇』や『カニバル』を参照してください。キューバ出身スペイン在住の共同執筆者アレハンドロ・エルナンデスについても紹介しています。監督と二人三脚で執筆しているほか、アカデミー賞外国語映画スペイン代表作品の候補サルバドル・カルボの 1898, Los ultimos de Filipinas を単独執筆している。

 

★前2作、『カニバル』と La mitad de Oscar 音楽はなかったが、新作にはクエンカ生れ(1945)のシンガー・ソング・ライターのホセ・ルイス・ペラレスが担当して話題になっています。IMDbに記載がないのは、初めての経験で「できるかどうか分からなかったので伏せておくよう」依頼されていたから。レコーディング・スタジオで「ラテンジャズのメロディがちりばめられたシークエンスを監督と初めて観て、子供のように二人で笑ってしまった」と語っている。依頼を受けてからの9ヵ月間、まるで身重の女性のように大変だった。やっと無事に生まれてくれたようです。 

   

               (監督とホセ・ルイス・ペラレス)

 

『カニバル』の記事は、コチラ201398

Mala temporadas(『不遇』)の記事は、コチラ201461172

マリア・レオン『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』の記事は、コチラ201559

『エンプティ・アワーズ』の記事は、コチラ2013117

 

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