ミシェル・フランコ「ある視点」の審査員賞*カンヌ映画祭2017 ⑩2017年05月30日 16:47

            グランプリはイランのモハマド・ラスロフの「LerdDregs)」に

 

27日、本体より一足先に「ある視点」の受賞結果が発表になりました。大賞のグランプリにはイランのモハマド・ラスロフLerdDregs)」が選ばれました。モハマド・ラスロフはジャファル・パナヒの助監督をしていた2010年、パナピの自宅で一緒にいるところを反体制分子として逮捕された(禁固刑5年)。保釈中に極秘裏に撮った「Good Bay」が「ある視点」部門で監督賞を受賞したが出国できなかった。第12回東京フィルメックスに正式出品され、『グッドバイ』の邦題で上映されたのでした。2013年にも同部門に「Manuscripts Don't Burn」がノミネーション、国際批評家連盟賞を受賞するなどカンヌの常連さん、今回が三度目の正直、初のグランプリ受賞となりました。今回は刑期も明けて授賞式には出席できたようです。イランはレベルが高く受賞となれば公開もアリでしょうか。

 

      

         (モハマド・ラスロフ監督を真ん中に出演の俳優たち)       

 

       「カンヌでの高評価は、メキシコ映画にとって励みになります」

 

ミシェル・フランコの近況をアップしたばかりですが、新作Las hijas de Abril審査員賞を受賞しました。最近の5年間で3回受賞は異例なこと、管理人も予想しておりませんでした。これはグランプリに次ぐ重要な賞だと思いますが、サンティアゴ・ミトレLa cordilleraと、セシリア・アタン&バレリア・ピバトのデビュー作La novia del desiertoが賞に絡めなかったことに深く落胆したのか、アルゼンチンの有力紙「クラリン」のレポーター氏は「小さな賞」と、悔しさをにじませおりました。発表後も「La novia del desierto」は「カメラ・ドール対象作品、まだ希望はある」と一縷の望みをつないでおりましたが(カメラ・ドールの審査委員長はフランスのサンドリーヌ・キベルラン)、こちらもフランスの監督に渡りました。監督以下、リカルド・ダリン、ドロレス・フォンシエリカ・リバスパウリナ・ガルシアと錚々たるメンバーで臨んだカンヌだっただけに手ぶらの帰国はちょっと辛いかもしれない。

  

     

 

 (ミシェル・フランコと製作者のロレンソ・ビガス

 

  

(ミトレ監督、エリカ・リバス、リカルド・ダリン、ドロレス・フォンシ、524日)

 

★「カンヌでいつも良い評価をいただけるのは、メキシコ映画にとって大きな励みになります」と受賞スピーチ、「これからも前進あるのみ」と締めくくりました。記者会見ではエンマ・スアレスが演じた「アブリルの役柄は不安にさせる反面、感情移入もしやすく、エモーションを大いに引き起こす」と語っていました。メキシコ映画といえば、麻薬密売に絡む暴力や口当たりのよいコメディが目立つが、それとは違うメキシコを描きたかったようです。アブリルの人格は、勇気があって他人への救いや思いやりがあるというのとはかけ離れている。エンマ・スアレスも『ジュリエッタ』の演技を超えたいと考えていたらしく、監督は「完成度が高く成功している」と起用が正解だったことに満足している。経済的に自立していない若い女性の妊娠は、メキシコというか他のラテンアメリカ社会の病根の一つ、女性はたちまち若さを失い老いていく。老いていくことの恐怖、メキシコ人の娘たちの母親はスペイン人、スペインはかつてメキシコの宗主国だった。母と娘の相克だけではすまされない複雑なメタファーが隠されているようです。

      

     「あんないい加減な映画が・・」と「クラリン」紙のレポーターはご立腹

 

★その他の受賞作品、監督賞テイラー・シェリダンの第2Wind River(英・カナダ・米)、彼は『ボーダーライン』(15)や『最後の追跡』(16)の脚本家として有名、これは予告編からも面白さが伝わってくる。公開はアリでしょうか。女優賞セルジオ・カステリットの「Fortumata」(伊)出演のジャスミン・トリンカ、作品も話題作、注目ですね。ポエティック・ナラティヴ特別賞は、オープニング上映だったマチュー・アマルリックBarbaraが受賞しました。こんな賞があったんですね。件の「クラリン」のレポーター氏、「あんないい加減な映画が・・・」と、ここでもいたくオカンムリ。審査員長のユマ・サーマン(米女優47歳)にまで八つ当たりしているようだ(笑)。このようなアルゼンチン人の熱狂的愛国思想が、ほかのラテンアメリカ諸国から嫌われる。

 

★今年はメキシコの二つのドリーム・チーム(制作会社「チャチャチャ・フィルムズ」と「カナナ」のメンバー)が勢揃いして、メキシコが目立ったカンヌでした。別路線のフランコ監督やカルロス・レイガダスは含まれない。左からアルフォンソ・キュアロン、キュアロンのパートナー(シェヘラザード・ゴールドスミス)、ギレルモ・デル・トロ、エマニュエル・ルベツキ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ディエゴ・ルナ、ガエル・ガルシア・ベルナル、サルマ・ハエックなど、全員集合ではないけれど、勢揃いしました。うちゴンサレス・イニャリトゥCarne y arenaがコンペティション外だがノミネートされ、カンヌの小型飛行機専用の飛行場の格納庫で上映されました(518日)。「映画館では見ることができないフィルムなんて、これは全くパラドックスだ」とアルモドバル。ネットフリックスだけでなく、映画の鑑賞方法も転機を迎えているのでしょうか。

 

 

         (カンヌ入りしたメキシコのドリーム・チーム、525日)

 

  

           (ゴンサレス・イニャリトゥの「Carne y arena」)

 

★昨年はブーイングがおきたパルム・ドールの受賞作品は、追加作品として飛び込んできたスウェーデンのリューベン・オストルンドのコメディThe Square」(スクエア)がさらいました。予想外だったとはいえ昨年よりはまだマシと納得した人が多かったか。本命視されていたお膝元のロバン・カンピヨ120ビーツ・パー・ミニット」は、グランプリを受賞した。他ソフィア・コッポラが監督賞をもらい、主演のニコール・キッドマンは女優賞は逃したが第70回記念賞を手にしました。「批評家週間」では、ブラジルのフェリペ・バルボザが「France 4 Visionary」という賞をもらいましたが、忖度するわけではありませんが審査委員長はブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ監督でした。ということで「監督週間」も含めてスペイン語作品は無冠に終わりました。

 

   

   (左から、ジュリエット・ビノシェ、オストルンド監督、審査委員長のアルモドバル)