カンヌを満喫するエンマ・スアレス*カンヌ映画祭2017 ⑨2017年05月26日 17:40

                 愛しすぎる母親は子供に取って重荷となる

 

    

★カンヌも後半、マンチェスター・アリーナのテロ事件のあおりを受けて、カンヌも警戒がますます厳しくなっているようです。今年のコンペティションは充実しているとかで、星取表も混戦模様、河瀨直美も上映後の10分間のスタンディング・オベーションに泣いていました。それにしてもタイトル『光』をイメージして芦田多恵に特注した豪華なドレスには驚きました。宝飾品はブルガリだそうで、お金持ちなんですねぇ。素直に喜びましょう。「ある視点」部門のミシェル・フランコLas hijas de Abrilの評判はどうだったのでしょうか。10分間のスタンディング・オベーションはあったのでしょうか(笑)。

  

  

  (エンリケ・アリソン、アナ・バレリア、監督、エンマ・スアレス、ホアンナ・ラレキ)

 

★昨年の『ジュリエッタ』に続いて今年もカンヌ入りしているエンマ・スアレス、「アブリルは私が演じたなかでも最高に難しい役だった。だって信念をもっている理性的な人とは全く反対な役、しかし高い目標に惹かれたの。演じる必要性を感じたし、中身をさらけ出して生きている。理解は難しいが、ただの悪役じゃやりたくなかった。たくさんの可能性があり、彼女なりのやり方だが娘たちに夢中になり守ろうとしている。私にとって幸いだったのは、私の視点を求められなかったこと。実際に脚本にあるような登場人物たちを裁けない。現実の社会が常に女性たちだけに強いている事柄、男性にはけっして要求されない何かについて熟考したかった。同時に家族の力学も大いに変化している」とカンヌでのインタビューで語っている。アブリルがバランスを欠いた錯乱した母親なのは、老いることを受け入れられないせいかもしれない。

 

   

      (突風に乱れた髪を押さえるエンマ・スアレス、520日、カンヌにて)

 

          4度目のカンヌ入りを果たした「カンヌのナイス・ガイ」

 

ミシェル・フランコ監督、「どうして母親役にスペイン女優を起用したのか」という質問には、「アメリカで映画を撮っているとき、まだプロジェクトも具体化していなかったが、この次は女性を主人公にしようと考えていた。『或る終焉』はアメリカで撮ったが、二度とアメリカで撮らないとは言わないけれど、次は故郷のメキシコで撮りたかった。アメリカでの経験を通して、母親が外国暮らしをしている母親不在の家族というアイデアが浮かんだ。じゃスペイン語が話せる外国人の女優では誰がいいだろうか、それがエンマだった。正しい選択だった。彼女なら登場人物になりきれるし、観客とも一体化できると考えた」とインタビューに応じていた。本作の撮影は約2か月、日曜日以外は休まなかった。その間「娘役たちは私たちのエネルギーを創り出すために一緒に生活した」そうです。彼の撮影方法は特別で、物語の進行にそって時系列に撮っていく。「新しい要素が急にはいるから、最終的には30%くらい撮り直しになる。なかには3回になることもある」という。これではいつ終わるのやら、一緒の仕事はなかなか大変です。

 

       

           (4度目のカンヌ、フランコ監督、上映会場にて)

 

★ここ数年、複雑な母親を描く作品が増えているのは、若い娘より経験豊かな母親のほうが多くの可能性を秘めているからだとも語っている。「迷宮からうまく抜け出してほしいが、本作を通じて女性を深く掘り下げることに興味をもった。主役に女性を選ぶのが好きな監督の気持ちがよく分かったということです」。本作のプロデューサーの一人、ベネズエラのロレンソ・ビガス監督もカンヌ入りしていました。『彼方から』2015)では、フランコ監督が反対にプロデューサーに回りました。ビガスの新作「La caja」にはフランコが製作に回るらしく、国境を越えて協力し合っているようです。フランコが現在手掛けているのは、エウヘニオ・デルベスと一緒にメキシコのテレビ用のコミック・シリーズ、これは面白い顔合わせでしょうか。エウヘニオ・デルベスは、第1回プラチナ賞2014の最優秀男優賞を受賞したコメディアンにして俳優、監督、プロデューサーと幾つもの顔をもつ才人です。

 

    

       (フランコ監督とプロデューサーのロレンソ・ビガス、カンヌにて)

 

Las hijas de Abril」の内容紹介は、コチラ201758

『或る終焉』の内容紹介は、コチラ2016615618