『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』*「シネ・エスパニョーラ2017」 ― 2017年03月04日 17:52
スペイン本国より一足先に日本で公開される!
★イニャキ・ドロンソロの長編第2作『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』のスペイン公開は4月28日と日本より1か月先になります。劇場公開は早くて半年後か1年後が常識のスペイン映画が、期間限定とはいえ本国より先とは前代未聞ではないか。2015年10月にバスク自治州ビスカヤ県の県都ビルバオでクランクインした。イバニェス通りに面したビスカヤ地方評議会都市開発省本部をスイス・クレジット銀行に早変わりさせて、マドリード警察犯罪捜査部の突入シーンで撮影を開始した。交通制限をしての撮影はマドリードでは不可能、ましてや小規模ながら交通量の多い街中で火災を起こすなどもっての外、ビルバオでも撮影時間の制限を受け大勢のヤジウマに取り巻かれての撮影だったようです。
『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』(原題「Plan de fuga」、英題「Escape Plan」)
製作:Atresmedia Cine / Euskal Irrati Telebista(EiTB) / Lazonafilms / Scape Plan
監督・脚本:イニャキ・ドロンソロ
撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン
音楽:パスカル・ゲイニュ
美術:セラフィン・ゴンサレス
プロダクション・デザイン:アントン・ラグナ
衣装デザイン:クララ・ビルバオ
メイクアップ:ナチョ・ディアス、ラケル・アルバレス(特殊メイクアップ)、
セルヒオ・ぺレス、カルメレ・ソレル(メイクアップ)
製作者:ゴンサロ・サラサル=シンプソン(エグゼクティブ)、ダビ・ナランホ
データ:スペイン、スペイン語、2017年、アクション・スリラー、105分、撮影地バスク州ビルバオとマドリードの数か所、撮影期間2015年10月12日より約8週間、配給元ワーナー・ブラザース・ピクチャー・スペイン、スペイン公開2017年4月28日、日本公開3月25日
キャスト:アライン・エルナンデス(ビクトル)、ルイス・トサール(警察犯罪捜査官リーダー)、ハビエル・グティエレス(ラピド)、アルバ・ガローチャ、フロリン・オプリテスク(ダミール)、イスラエル・エレハルデ(弁護士)、イツィアル・アティエンサ(マルタ)、エバ・マルティン(経済犯罪係官)、マリオ・デ・ラ・ロサ(消防士)、トマス・デル・エステ、ペレ・ブラソ(尋問官)、ほか
プロット:金庫破りのプロフェショナル、ビクトルの物語。ヨーロッパ旧共産圏の元軍人たちで概ね組織された犯罪グループは、仲間の一人を失って活動休止に陥っていた。銀行に押し入り金庫室を掘削機で穴を開けるには、どうしてもプロをリクルートする必要があった。こうして一匹狼のビクトルに白羽の矢が立ち、彼も合流する決心をする。しかし何者かの通報で強盗一味は一網打尽に逮捕されてしまった。事件はあっけなく終わったかに見えたが、ビクトルが請け負ったミッション、金庫室の穴開け作業は開始されることになるだろう。ビクトルの本当の狙い、警察犯罪捜査部の本当の狙いとは果たして何だったのか。ここから本当のドラマが始まる。「罠に落ちるのは誰か?」「結末はどうなるか?」何人も100パーセント安全なものはいない。
(ビルバオでの撮影初日、2015年10月12日)
★最近日本で公開される映画でルイス・トサールほど出演本数が多い俳優はいないのではないか。公開が始まったダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』、キケ・マイジョの『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「シネ・エスパニョーラ2017」上映)、ダニ・デ・ラ・トーレの『暴走車 ランナウェイ・カー』、ダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』、少し古いがイシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』(10)などです。1999年、同監督の『花嫁のきた村』の主役で登場以来、『テイク・マイ・アイズ』など、誠実だが不器用にしか生きられない屈折した男を好演してきた。転機が訪れたのは声帯をつぶし肉体改造をしてまで取り組んだ、ダニエル・モンソンの『プリズン211』(09)のマラ・マドレ役だったと思う。「こういうトサールを見たかった」と興奮したのを思い起こします。役者になることを反対し続けてきた父親から「やっと認めてもらえた」と彼も当時インタヴューで語っていた。しかしこの成功が役柄のマンネリ化をきたしているのではないかと個人的には危惧しています。
(指揮を執るルイス・トサール、映画から)
★主役ビクトル役のアライン・エルナンデスは、1975年バルセロナ生れ、ということでカタルーニャ語とのバイリンガル、2007年、舞台俳優として出発、同時にTVシリーズドラマ「La Riera」(15、21話)、「Mar de plástico」(15~16、14話)などで演技の実績を積んでいる。代表作はフェルナンド・ゴンサレス・モリナの「Palmeras en la nieve」(15)、これは2015年暮れに公開され翌年ブレイクして2016年興行成績がフアン・アントニオ・バヨナの新作『ア・モンスター・コールズ』(6月公開予定)についで第2位となったヒット作。主役はマリオ・カサスとアドリアナ・ウガルテ、彼は準主役を演じた。ゴヤ賞2017新人監督賞ノミネートのマルク・クレウエトの「El rey tuerto」(16)では、機動隊所属の警察官に扮した。エミリオ・マルティネス=ラサロの「Ocho apellidos catalanes」(15)にも少しだけ顔を出していた。『ホテル・ルワンダ』の英監督テリー・ジョージの「The Promise」(16)にも出演しているが目下は未公開、つまり日本初登場ということになるのでしょうか。
(金庫室の穴開けのヘルメット姿のアライン・エルナンデス、映画から)
★ラピド役のハビエル・グティエレスについてはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』やイシアル・ボリャインの『The Olive Tree』でご紹介済み、彼も『暴走車 ランナウェイ・カー』で出番は少なかったが存在感を示した。アルバ・ガローチャは、1990年サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラー』やマリア・リポルの新作「No culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas」(16)に出演、これはゴヤ賞2017で衣装デザイン賞にノミネートされていた作品。弁護士役のイスラエル・エレハルデは『マジカル・ガール』で既に登場、バルバラ・レニーの現恋人、演技には定評があります。かなり期待していいキャスト陣です。尚キャスト、スタッフの人名表記は公式サイトと若干異なります。当ブログではスペイン語に近い発音を採用しています。
(アラン・エルナンデスとハビエル・グティエレス、映画から)
*監督キャリア&フィルモグラフィ紹介*
★イニャキ・ドロンソロIñaki Dorronsoro は、1969年バスク自治州ビトリア生れ、監督、脚本家。スリラー「El ojos del fotógrafo」(93、50分)でデビュー、本作を長編とするか中編とするかで数え方が変わる。当ブログでは次回作「La distancia」(06)を第1回作品としています。ジャンルはスリラー、サンセバスチャン、グアダラハラ、トゥールーズ・シネエスパーニャ、カルロヴィ・ヴァリー、コペンハーゲン、各映画祭に出品、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(トゥールーズ・シネエスパーニャ映画祭新人男優賞受賞)、ホセ・コロナド、フェデリコ・ルッピ、リュイス・オマールなどが共演している。グアダラハラ映画祭ではダニエル・アランジョが撮影賞を受賞した。10年ぶりに『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』を撮った。TVドラも手掛けている。
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