『キリング・ファミリー』アドリアン・カエタノ*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年02月20日 15:10

       『キリング・ファミリー 殺し合う一家』は犯罪小説の映画化

 

325日から2週間限定で開催される「シネ・エスパニョーラ20175作品の一つ、アドリアン・カエタノ『キリング・ファミリー 殺し合う一家』のご紹介。前回アドリアン・カエタノ映画はオール未公開と書きましたが、未公開には違いないのですが、2013年の前作「Mala」が『イーヴィル・キラー』の邦題でDVD発売(20139月)されておりました。本作の原題「El otro hermano」が『キリング・ファミリー 殺し合う一家』と、いささかセンセーショナルな邦題になった遠因かもしれません。新作はアルゼンチンの作家カルロス・ブスケドの小説Bajo este sol tremendoに着想を得て映画化されたもの。

 

 

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』(「El otro hermano」英題「The Lost Brother」)2017

製作:Rizoma Films(アルゼンチン) / Oriental Films(ウルグアイ) / MOD Producciones(西) / Gloria Films()    協賛:Programa Ibermedia/ INCAA / ICAU / ICAA

監督・脚本:イスラエル・アドリアン・カエタノ

脚本():ノラ・Mazzitelli(マッツィテッリ?) 原作:カルロス・ブスケド

撮影:フリアン・アペステギア

音楽:イバン・Wyszogrod

編集:パブロ・バルビエリ・カレラ

製作者:ナターシャ・セルビ、エルナン・ムサルッピ

 

データアルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス合作、スペイン語、2017年、犯罪スリラー、113分、撮影地:サン・アントニオ・デ・アレコ(ブエノスアイレス)、ラパチト(アルゼンチン北部のチャコ州)など、撮影は2016125日から311日の約7週間、これから開催される第34マイアミ映画祭2017がワールド・プレミア、第20マラガ映画祭2017の正式出品が決定しています。

 

キャスト:ダニエル・エンドレル(ハビエル・セタルティ)、レオナルド・スバラグリア(ドゥアルテ)、アンヘラ・モリーナ(マルタ・モリナ)、パブロ・セドロン(古物商)、アリアン・デベタック(ダニエル・モリナ)、アレハンドラ・フレッチェネル(エバ)、マックス・ベルリネル、ビオレタ・ビダル(銀行出納係)、エラスモ・オリベラ(死体安置所職員)他

 

プロット・解説ラパチトで暮らしていた母親と弟エミリオの死を機に闇の犯罪組織に否応なく巻き込まれていくセタルティの物語。セタルティは打ちのめされた日々を送っていた。仕事もなく、何の目的も持てず、テレビを見ながらマリファナを吸って引きこもっていた。そんなある日、見知らぬ人から母親と弟が猟銃で殺害されたという情報がもたらされる。ブエノスアイレスからアルゼンチン北部の寂れた町ラパチトに、家族の遺体の埋葬と僅かだが掛けられていた生命保険金を受け取る旅に出発する。そこではドゥアルテと名乗る町の顔役が彼を待ち受けていた。元軍人で家族の殺害者モリナの友人で遺言執行人もあるという。しかしドゥアルテの裏の顔はこの複雑に入り組んだ町の闇組織を牛耳るボス、誘拐ビジネスを手掛けるモンスターであった。セタルティは次第に思いもしなかったドゥアルテのワナにはまっていく。

 

   

        (ドゥアルテ役のスバラグリアとセタルティ役のエンドレル)

 

★まだワールド・プレミアしていないせいか、現段階ではプロットが日本語公式サイトとスペイン語版にかなりの齟齬が生じています。映画化の段階で変更したとも考えられます。監督が小説にインスピレーションを受けて映画化したと語っているので、映画化の段階で変更したとも考えられます。プロットも映画のほうが複雑になっています。原作と映画は別作品ですから人名やプロットの変更は問題なしと思います。

 

  

              (ダニエル・エンドレル、映画から)

 

本作クランクイン時のインタビューで「登場人物の行動を裁く意図はなく、むしろアウトサイダー的な生き方しかできない彼らに寄り添いながら旅をして支えていく、そういう彼らの紆余曲折を語りたい。そうすることが政治的な不正や反逆の方向転換になると考えるから」と語っている。存在の空虚さ、責任感のなさ、拷問についての政治的な倫理観の欠如、これらは過去の監督作品Un oso rojo『イーヴィル・キラー』の通底に流れるテーマと言えます。

 

 

             (フリオ・チャベスが好演したUn oso rojoのポスター)

 

イスラエル・アドリアン・カエタノIsrael Adorián Caetanoは、1969年モンテビデオ生れのウルグアイの監督、脚本家。ウルグアイは小国でマーケットが狭く主にアルゼンチンで映画を撮っている。デビュー作Bolivia01)がカンヌやロッテルダム映画祭で高評価を受け、その後Un oso rojo02A Red Bear)、Crónica de una fuga06Chronical of an Escapa)、Francia09Mala13、英題「Evil Woman『イーヴィル・キラー』DVDなどの問題作を撮っている。その他、短編、長編ドキュメンタリー、シリーズTVドラなどで活躍している実力者。

 

    

                      (イスラエル・アドリアン・カエタノ監督)

 

 

(本作撮影中の監督とダニエル・エンドレル)

 

原作者カルロス・ブスケドは、1970年チャコ州のロケ・サエンス・ペニャ生れ、現在はブエノスアイレス在住。小説執筆の他、ラジオ番組、雑誌「El Ojo con Dientes」に寄稿している。

 

   

               (原作者カルロス・ブスケド)

 

キャスト陣、ドゥアルテ役のレオナルド・スバラグリアは、1970年ブエノスアイレス生れ、エクトル・オリヴェラの『ナイト・オブ・ペンシルズ』(86)でデビュー、TVドラで活躍後、1998年スペインに渡り活躍の場をスペインに移す。マルセロ・ピニェイロの『炎のレクイエム』(00)、フアン・カルロス・フレスナディジョの『10億分の1の男』(01)、ビセンテ・アランダの『カルメン』(03)のホセ役、マリア・リポルの『ユートピア』(03)など、スペイン映画出演も多い。最近ヒットしたダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(14)の第3話「エンスト」でクレージーなセールスマンを演じてファンを喜ばせた。

『人生スイッチ』やキャリア紹介は、コチラ2015729

 

  

                      (レオナルド・スバラグリア、映画から)   

 

★母親役アンヘラ・モリーナはパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』の祖母役、アルモドバルの『抱擁のかけら』の母親役、細い体にもかかわらず5人の子だくさんは女優として珍しい。海外作品の出演も多く、昨2016年の国民賞(映画部門)を受賞した。仕事と家庭を両立させていることが、ペネロペ・クルスのような若手女優からも「将来なりたい女優」として尊敬されている。

アンヘラ・モリーナの紹介記事は、コチラ2016728

 

  

      (最近のアンヘラ・モリーナ)

 

★当ブログ初登場のダニエル・エンドレルは、1976年モンテビデオ生れのウルグアイの俳優、監督、脚本家、製作者。本作のカエタノ監督同様アルゼンチンで活躍している。2000年、ダニエル・ブルマンのいわゆる「アリエル三部作」の主人公アリエル役でデビュー。第一部『救世主を待ちながら』は東京国際映画祭で特別上映され、2004年、第二部僕と未来とブエノスアイレスは、ベルリン映画祭の審査員賞グランプリ(銀熊)、クラリン賞(脚本)、カタルーニャのリェイダ・ラテンアメリカ映画祭では作品・監督・脚本の3を独占した。第三部Derecho de familia06)は未公開、今作ではかつてのアリエル青年も結婚した父親役を演じた。公開作品ではパブロ・ストール&フアン・パブロ・レベージャのウルグアイ映画『ウイスキー』04)にも脇役で出演、両監督の25 Wattsでも主役を演じた。

 

 

    (邦題僕と未来とブエノスアイレス』と訳された「El abrazo partido」のポスター

 

  

(父親役を演じたアリエル、Derecho de familia」の一場面

 

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