異色の顔ぶれが揃いました*ゴヤ賞2016ノミネーション ⑯2016年02月06日 21:31

         アントニア・グスマンは93歳でした!

 

★時間的にこれが最終回になりそうです。今年はフランス映画界のミューズ、ジュリエット・ビノシュ、御年93歳の新人アントニア・グスマン、アルゼンチンからリカルド・ダリン、目下妊娠5ヶ月という最多ノミネーションの“La novia”監督パウラ・オルティス、プロデューサー初挑戦も果たした“Ma Ma”のペネロペ・クルスなど海外勢を含めて異色の顔ぶれが揃いました。1階観客席の最前列には、ゴヤ賞ガラを取り仕切るのが今回初めてとなる映画アカデミー会長アントニオ・レシネス、ビノシュ、ダリン、クルス、ティム・ロビンス(まだ出席の確認が取れていない)が並ぶことになるらしい。他ルイス・トサールインマ・クエスタハビエル・カマラノラ・ナバスマリアン・アルバレス・・・

 

 

     (ここに5ヶ月の赤ちゃんが入っています。赤いドレスがオルティス監督)

 

★若手では“Techo y comida”のナタリア・デ・モリーナ、主演を勝ち取るには、ビノシュ、クルス、クエスタの大きな壁を越えなければならない。“Requisitos para ser una persona normal”の監督主演のレティシア・ドレラ、新人女優賞の先頭を走る“Un otoño sin Berlín”のイレネ・エスコラル、しかし二番手のアントニア・グスマンが肉薄して予断を許さないという。彼女の孫、新人監督賞を狙う“A cambio de nada”のダニエル・グスマンが受賞するとアリかもしれない。ただ新人賞は将来の可能性を判断基準にするわけだから、ニュースとしては面白いが、銀幕に再登場することが考えにくいアントニア・グスマンはないと予想します。

 

アントニア・グスマンの故郷アビラ(サンタ・テレサの生地として有名)では、全町民がテレビの前に陣取って観戦(!) するという噂、「うちの家族は、なんだってこんな面倒なことに首を突っ込んだのかと呆れているの」と、杖をついて現れた貫禄のアントニアは平静そのもの動ずることがない。80代後半かなと思って前回「80代の新人」と書きましたが、このインタビューで「93歳」と判明、歴代栄誉賞受賞者でも90代はいなかったと思います。今回の受賞者マリアノ・オソレス1926年生れの89歳、最高齢受賞かもしれない。

 

    

         (主役のミゲル・エランと祖母役のアントニア・グスマン)

 

  

              (栄誉賞受賞者マリアノ・オソレス)

 

★反対に「うちの家族は見ないと思う」と語るのがジュリエット・ビノシュ、過去にスペイン人以外の主演女優受賞者はいないし、アントニア・グスマンと同じように再登場はないでしょう。「私にスポットライトが当たっているわけではないから、静かに座っているだけ」と、例の遠慮のないコメント。作品賞5作のなかでも興行成績が最低の62.148枚しか売れなかった。奇特な人が計算したら、747人に1人の割でしか見ている人に出会えない(総人口約4640万人)。アカデミー会員は現在約1400人に増加しているが、それでも2人しか見ていない計算になる。これは冗談ですけどね。イサベル・コイシェ監督はそんなイジメでヘコむ女性ではない、「私の映画が好きな人が見てくれればいいの」と、外野の野次など何処吹く風なのでした。でも内心はショックでしょうね。

 

   

     (ジュリエット・ビノシュとイサベル・コイシェ、ベルリン映画祭にて)

 

 興行成績ランキングと候補作は重ならない?

 

★観客と批評家の乖離は毎年蒸し返されるテーマ、2015年のスペイン国内の観客動員数は9400万人、うち5作品の合計が110万人(!)とデータは容赦ない。セスク・ゲイの“Truman”が最高の50万人を占める、流石にこれでは少なすぎです。ノミネーション作品の最高はアニメーション賞受賞が確実視されているエンリケ・ガトAtrapa la bandera3-D)だそうです。“Las aventuras de Tadeo Jones”の監督です。しかし製作費も1250万ユーロと半端じゃない。他に観客が見ていた映画は何かというと、2014年の大当たり映画マルティネス=ラサロのコメディ“Ocho apellidos vascos”の続編Ocho apellidos catalanesアメナバルのスリラーRegresiónマリア・リポルのコメディAhora o nuncaなど、単独でいずれも5作品の合計より多い。 

 

 

             (“Atrapa la bandera”のポスター)

 

Ocho apellidos catalanes”の記事は、コチラ⇒2015129

Regresión”の記事は、 コチラ⇒20151月3

Ahora o nunca”の記事は、 コチラ⇒2015714

 

★というわけでマルティネス=ラサロとマリア・リポルの両方の主役、“Atrapa la bandera”のボイス出演のダニ・ロビラは憤懣やるかたない(連続して総合司会を務めることになっている)。「僕たちは批評家ではなく観客のために映画を作っている」と。昨年は“Ocho apellidos vascos”で新人賞を受賞、他に助演賞にカラ・エレハルデカルメン・マチが受賞した。しかし今年のノミネーションは「ゼロ」でした。バスク編は延べ1000万人を超える大ヒット作品でしたが、続編も公開1週間集計で180万弱と驚異的な数字を記録した。

 

 

           (ダニ・ロビラ、2015年ゴヤ賞ガラの総合司会者)

 

★しかし“Truman”のセスク・ゲイは、「そもそも映画賞の評価基準は観客動員数とは重ならない。別の側面から与えられるものなのです」と語る。オスカー賞だって同じですよね、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』も技術部門はあるが作品賞にはノミネートされていない。しかしヨーロッパ映画賞などのカテゴリーはなくてもいいかなと思う(廃止された時期がある)。出席者も殆どないし、“Mustang”(仏トルコ独)は授賞式には間に合わず3月公開だという。つまり映画祭上映だけで殆どの会員が見ていない映画をどうやって評価すればいいのだろうか。カテゴリーの入れ替えを含めて考え直す時期にきているということです。

 

           

                (セスク・ゲイ監督)

 

 大方の予想はガラの予定時間3時間は守られない!

 

★国民が未見の映画ではガラの視聴率も期待できない。昨年のオスカー賞受賞作品はアレハンドロ・G・イニャリトゥの『バードマン』だったが、最低の視聴率だった。なぜならみんな映画を見ていなかったからだ。だらだら続く受賞スピーチの制限時間を守って欲しい。仕事仲間への感謝の言葉はエチケットだが、両親、祖父母、兄弟、なかには子供たちにまで広げる受賞者がいる。いくら翌日仕事がない土曜日の夜でも、3時間半は超えないで欲しいというのが視聴者の願い。

 

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