アリエル賞2015*『グエロス』 が作品賞など 5 賞 ― 2015年06月10日 19:29
ルイスパラシオスの『グエロス』が大賞を独り占め
★第57回アリエル賞2015ノミネーションの大枠はすでにアップ済みですが、5月27日、受賞結果が発表になりました。アルフォンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』が作品賞・監督賞・監督第1作賞など下馬評通り、新人男優賞のセバスティアン・アギーレは『グエロス』と“Obediencia perfecta”の両方でノミネートされていましたが後者で受賞、役の重さからいっても順当な受賞でした。イベロアメリカ映画賞の“Relatos
salvajes”は『人生スイッチ』の邦題で公開予定(7月25日)、ただし監督名がジフロンです(当ブログはシフロンでご紹介していますが)。

(トロフィーを手にしたアルフォンソ・ルイスパラシオス)
作品賞:『グエロス』“ Güeros”
監督賞:アルフォンソ・ルイスパラシオス(『グエロス』)
監督第1作賞:『グエロス』
オリジナル脚本賞:リゴベルト・ペレスカノ(“Carmín
tropical”)
脚色賞: エルネスト・アルコセル&ルイス・ウリクサ (“Obediencia perfecta”)
男優賞:フアン・マヌエル・ベルナル(“Obediencia
perfecta”)
女優賞: アドリアナ・パス (“La tirisia”)
助演男優賞: ノエ・エルナンデス (“La
tirisia”)
助演女優賞:イセラ・ベガ (“Las horas
contigo”)
新人男優賞: セバスティアン・アギーレ (“Obediencia
perfecta”)
新人女優賞: イサベル・ウエルタ (“Seguir viviendo”)
撮影賞:ダミアン・ガルシア (『グエロス』)
編集賞: バレンティナ・ルデュク(“Las oscuras primaveras”)
音楽賞: エマヌエル・デル・レアル/レナト・デル・レアル/ラミロ・デル・レアル (同上)
特殊効果賞: リカルド・アルビス& Willebaldo Bucio (“El crimen
del cácaro Gumaro”)
美術デザイン賞:クリストファー・ラグネス (“Cantinflas”)
視覚効果賞:チャーリー・イトゥリアガ (“Visitantes”)
録音賞: 『グエロス』&“Las
oscuras primaveras”の2作
衣装賞: ガブリエラ・フェルナンデス (“Cantinflas”)
メイクアップ賞:マリパス・ロブレス (“Cantinflas”)
ドキュメンタリー賞:“H20mx” (ホセ・コーエン、ロレンソ・アヘルマン)
イベロアメリカ映画賞:“Relatos
salvajes”(ダミアン・シフロン)『人生スイッチ』に決定
短編アニメーション賞: “El modelo
Pickman” (パブロ・アンヘレス・スマン)
短編フィクション賞:“Ramona”(ジョバンナ・サカリアス)
短編ドキュメンタリー賞:“El
penacho de Moctezuma”(ハイメ・クリ)
◎金のアリエル賞(Ariel de Oro):ミゲル・バスケス / ベルタ・ナバロ

(男優賞と新人男優賞を受賞したベルナルとアギーレ)
★ロード・ムービー『グエロス』が大賞をせしめる結果になりましたが、アリエル賞受賞作品は「一般観客は見に行かない」と皮肉られるようですが、メキシコのヌーベルバーグと評価の高い本作はどうなんでしょうか。確かに昨年のケマダ≂ディエスの『金の鳥籠』(“La Jaula de oro”難民映画祭2014上映)が盛り上がりに欠けたことは、映画アカデミー会長ブランカ・ゲラも認めております。しかしアリエル賞は将来性のある若い監督を応援するのが一つの目的ですから、ここらへんがゴヤ賞とは違う点です。
★ハリウッド進出前の、ギジェルモ・デル・トロ(『クロノス』93)、今やオスカー監督となったアルフォンソ・キュアロン(『最も危険な愛し方』91)とアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『アモーレス・ペロス』00)の中堅三羽ガラスも、デビュー作が受賞しています。もっともキュアロンは本作の上映をめぐって資金提供者の政府と揉め、それがハリウッド行きを決心させたという話は有名です。テレビやドキュメンタリーを除くと7~8作と少ないが、受賞歴は山ほどあって自身でも覚えきれないでしょう。3人ともお金のかかる映画を作っているから、もう資金力のないメキシコには戻ってこないかな(笑)。
★日本でも一部のシネマニアから熱狂的な支持を得ているカルロス・レイガダスは『静かな光』(07)で受賞、あのブニュエルだって半世紀以上も昔に『忘れられた人々』(50)で受賞しています。亡命スペイン人監督が撮ったメキシコ映画でした。「映画アカデミーのオトモダチに賞をやってる」という悪口も聞こえてきますが、文句を言う人は何時でもどこでもいるものです。
★一般観客に人気のあったのは、国民的な英雄ともいえるカンティンフラスの伝記映画、セバスティアン・デル・アモの“Cantinflas”でしょう。メキシコのみならずラテンアメリカ全体で尊敬され、チャップリンも認めたという偉大なコメディアンでした。カンティンフラスことマリオ・モレノに扮したスペインのオスカル・ハエナダは男優賞を逃しました。美術・衣装・メイクアップとスタッフ陣が報われ、バランスを取ったという印象です。2014年秋にメキシコで公開されるや、中南米の北から南まで殆どの国で公開されています。ラテンビート上映を期待しています。

★政府からの資金援助や報奨金が削減されていくなかで「映画は文化大使の役もしているのだから削減しないで」と『グエロス』のルイスパラシオス監督。喜びのなかでも資金援助削減で映画製作が深刻になりつつある現状を訴えた。
★金のアリエル賞受賞者は二人。ミゲル・バスケスは特殊効果のベテラン、50作ほど手掛けている。ベルタ・ナバロはメキシコでは指折りのプロデューサー、30作ほど手掛けている。若いころのギジェルモ・デル・トロの才能を発掘して『クロノス』を撮らせ、つづく『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』などを国際的に成功させた。デル・トロも「彼女なくして今日の自分はない」と言うほどの恩人プロデューサーです。エクアドルのセバスティアン・コルデロの『激情』も手掛けている。写真下は編集賞を受賞した娘バレンティナ・ルデュクとのツーショット。

関連記事*管理人覚え
◎アリエル賞2015ノミネーションの記事はコチラ⇒2015年4月29日
◎『グエロス』の記事はコチラ⇒2014年10月3日/10月30日
◎ルイス・ウルキサの“Obediencia perfecta” の記事はコチラ⇒2014年9月1日
◎アリエル賞2014の結果発表『金の鳥籠』の記事はコチラ⇒2014年6月5日
◎ダミアン・シフロンの“Relatos salvajes”の記事
カンヌ映画祭2014での紹介記事⇒2014年5月1日/5月22日
トロント映画祭2014での紹介記事⇒2014年8月15日
*『人生スイッチ』7月25日公開予定(ヒューマントラスト有楽町他、全国順次ロードショウ)
オフィシャルサイトは http://jinseiswitch.gaga.ne.jp/
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2015/06/10/7666164/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。