「ある視点」メキシコ映画*カンヌ映画祭2015 ⑩2015年05月31日 16:57

       ダビ・パブロスの“Las elegidas”はティフアナが舞台の禁じられた愛

 

★女性連続殺人事件で悪名高いティフアナが舞台の少女売春では如何にも気が重い、と躊躇しているうちにカンヌ映画祭は終わってしまいました。カンヌ本体の「ある視点」、この部門にはコロンビアのホセ・ルイス・ルへレスのAlias Maríaとメキシコのダビ・パブロスのLas elegidasがノミネーションされていました。“Alias María”の記事はコチラ⇒527

 


★カンヌではThe Chosen ones”のタイトルで上映された本作は、ホルヘ・ボルピの同名小説にインスパイヤーされて映画化された。製作会社 Canana カナナのプロデューサー、パブロ・クルスが映画化の権利を以前に取得、長年温めていた企画だそうです。映画祭にはダビ・パブロス監督、パブロ・クルス、原作者のホルヘ・ボルピ、出演のナンシー・タラマンテスレイディ・グティエレスなどがカンヌ入りして盛大なオベーションに感激、互いに抱き合って涙を流した。これがカンヌなんですよね。カンヌは初めてという監督を駐仏メキシコ大使アグスティン・ガルシア≂ロペスがアテンダントするという熱の入れようでした。

 

     

       (左から、ナンシー・タラマンテス、監督、レイディ・グティエレス カンヌにて)

 

         Las elegidas(“The Chosen ones”)

製作Canana / Krafty Films / Manny Films

監督・脚本:ダビ・パブロス

脚本(共同)ホルヘ・ボルピ(原作)

撮影:カロリーナ・コスタ

音楽:カルラ・アイジョンAyhllon

編集:ミゲル・Schverdfinger

  

データ:メキシコ、スペイン語、2015105分、撮影地メキシコのティフアナ市

カンヌ映画祭2015がワールド・プレミア

 

キャストナンシー・タラマンテス(ソフィア)、オスカル・トーレス(ウリセス)、レイディ・グティエレス(マルタ)、ホセ・サンティジャン・カブト(エクトル)、エドワード・Coward(マルコス)、アリシア・キニョネス(ペルラ)、ラケル・プレサ(エウヘニア)他

 

プロット:ソフィアとウリセスの愛の物語。14歳のソフィアと若者ウリセスは愛し合っている。ウリセスの父親が少女たちに売春を無理強いしようとしたとき、二人の関係に緊張が走った。最初の犠牲者がソフィアだったのだ。ソフィアを救い出すためには代わりの少女を見つけなければならないウリセス。メキシコでもアメリカでもない町ティフアナを舞台に繰り広げられる少女売春ネットワーク。過去のことでも、未来のことでもない、いま現在メキシコで起こっていることが描かれている。 

             

                    (娼婦にさせられた少女たち、“Las elegidas”から)

 

 監督経歴&フィルモグラフィー

ダビ・パブロス David Pablos、メキシコ生れの32歳、監督、脚本家。メキシコ・シティの映画養成機関「CCCCentro de Capacitación Cinematográficaで学ぶ。フルブライト奨学金を得てニューヨークのコロンビア大学で監督演出を専攻、マスターの学位を授与される。2009年ベルリン映画祭のタレント養成の参加資格を得る。短編“La canción de los niños muertos”がカナナのパブロ・クルスの目にとまり、“Las elegidas”の監督に抜擢された。

   

代表作は以下の通り:

2007年“El mundo al atardecer”短編

2008年“La canción de los niños muertos”(“The Song of the Dead Children”)短編、

アリエル賞2010(フィクション短編部門)受賞、ほか受賞歴多数

2010年“Una frontera, todas las fronteras”(“One Frontier, All Frontiers”)

アムステルダム・ドキュメンタリー映画祭2010正式出品

2013年“La vida después”長編デビュー作、ヴェネチア映画祭2013「オリゾンティ賞」ノミネー    ション、ブラック・ムーヴィ映画祭2014審査員賞ノミネーション、モレリア映画祭上映、他

2015年“Las elegidas”省略

 

             

            (ダビ・パブロス、ベネチア映画祭2013から)

 

 トレビアあれこれ

★製作会社「カナナ」設立者としては、ディエゴ・ルナやガエル・ガルシア・ベルナルが有名だが、主力はパブロ・クルスである。製作者は裏方なので名前は知られているとは言えないが、彼はメキシコ映画を精力的に世界に発信続けている実力者。ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティングで映画理論を学び、ニューヨークの「スクール・オブ・ヴィジュアル・アーツSVA」の学士号を得ている。イギリスで長年ケン・ローチ監督のもとで仕事をした後メキシコに帰国、2003D.ルナやG.G.ベルナルなどとカナナを設立した。第1ヘラルド・ナランホの『ドラマメックス』2006ラテンビート上映)が、いきなりカンヌ映画祭の「批評家週間」にノミネートされ、カナナは順調な船出をした。

 

★その後G.G.ベルナルの『太陽のかけら』2007)、ディエゴ・ルナの『アベルの小さな旅』2010)や『セザール・チャベス』2014)を製作、それぞれラテンビートで上映された。本作と似ているテーマではヘラルド・ナランホのMISS BALA/銃弾』2011)が記憶に新しい。こちらも「ある視点」で上映された。麻薬密売に巻き込まれた実在のミスコンの女王ラウラ・スニガがモデルになっている。ラテンビートのゲストとして来日Q&Aに出席した。

 

             

          (『アベル』のポスターを背にカナナ設立者の三人)

 

★「原作者ホルヘ・ボルピから映画製作の権利を買い、映画化のチャンスを模索したが、最初映画化は難しいように思われた。そんなときパブロスの短編La canción de los niños muertos”を見た。当時彼はCCCの学生だったので卒業を待っていた」とクルス。この短編がアリエル賞2010を受賞したのは上記の通りです。「ダビはまだ監督のたまごでしたが、ダイヤモンドのような輝きを秘めていた」とぞっこんのようです。完成した映画がカンヌへ、期待は裏切られなかったということです。Las elegidas”にはディエゴ・ルナとガエル・ガルシア・ベルナルも、エグゼクティブ・プロデューサーとして深く関わっている。

 

★ホルヘ・ボルピの原作は、1970年代以降売春、人身売買の忌まわしい慣習の町として悪名高いトラスカラ州テナンシンゴの「ファミリー」に着想を得て書かれた小説。ダビ・パブロスがティフアナに変更して映画化した理由は、4歳から18歳までここで暮らしており、よくティフアナの事情に通じていたから。「ここはメキシコでもアメリカでもなく両方が混合している。魅惑的で活気があり、世界中の人々が影響しあって、多様な文化をもつ都市だ」とも。

 

★原作者と監督は、映画化に向けて脚本を練り始めた。主人公ウリセスはいかがわしい生業を営む家族の一員、自分の恋人を餌食にされる文脈だから、暴力が前面に出てしまうと汚れた映画になる危険があった。自分はそうしたくなかったので「複雑なテーマの内面を掘り下げる」描写を心がけたと監督。暗く難解な原文にポエティックなイメージを入れてバランスをとったようです。

 

                

              (ウリセス役のオスカル・トーレス)


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