アリエル賞2015*ノミネーション発表2015年04月29日 16:21

           メキシコ「アリエル賞」の授賞式は527

 


モノクロ・コメディ『グエロス』がノミネーション最多の12

 ★マラガ映画祭にかまけている間に映画「新」情報も「旧」になってしまいましたが、まだガラまでには時間があります。マラガ映画祭受賞作品の落ち穂拾いは一旦小休止して、メキシコのアカデミー賞「アリエル賞」の大枠をアップいたします(現在のメキシコ映画アカデミー会長はブランカ・ゲラ)。第57回という回数に驚きますが、57年前はメキシコ映画の「黄金時代」と言われた頃、まだブニュエルがメキシコで映画を撮っていた時代、スペインはフランコ体制が揺るぎもしなかった時代です。ゴヤ賞の2倍の歴史をもっている勘定になります。

 


★さて、ラテンビート2014で上映されたアロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』が最多の12個のノミネーションは嬉しいニュースです。ベルリン映画祭(パノラマ部門)でデビュー作に与えられる「初監督作品賞」やサンセバスチャン映画祭の「ベスト・フィルム&ユース賞」など評価は高く、ラテンビート作品紹介でもかなり詳しく紹介いたしました。

 

カテゴリーは、作品賞・初監督作品賞・監督賞・オリジナル脚本賞・男優賞(テノッチ・ウエルタ)・女優賞(イルセ・サラス)・新人男優賞(セバスティアン・アギーレ)・撮影賞(ダミアン・ガルシア)、オリジナル作曲賞・編集賞・美術賞他など。主な出演者3人が選ばれています。セバスティアン・アギーレは“Obediencia perfecta”とダブルでノミネートされています。作品賞と初監督作品賞の両方にノミネートされており、後者のカテゴリーにはライバルとして、「モントリオール映画祭2014」出品の、クリスティアン・ディアスのGonzalez、マックス・スニノのLos banistas、ルイス・ウルキサのObediencia perfectaなどがノミネートされており混線模様です(当ブログでも紹介)。

 

『グエロス』の記事はコチラ2014103日/1030

クリスティアン・ディアスの“Gonzalez”の記事はコチラ2014821

マックス・スニノの“Los bañistas の記事はコチラ2014821

ルイス・ウルキサの“Obediencia perfecta の記事はコチラ201491

 

   (ノミネーション・プレゼンターのソフィア・エスピノサとルイス・メンデス、
    中央がブランカ・ゲラ会長)

 

★スペインでは320日公開でしたが、前宣伝として監督紹介から受賞歴まで新人監督作品にしては異例のサービスぶりから期待のほどが感じられました。デヴィッド・リンチの後継者とか、ジム・ジャームッシュを思い起させるとか、好意的な批評が多い。前者は製作・監督・脚本・美術など一人で自主制作したカルト映画『イレイザーヘッド』(1977、モノクロ)を、後者も全編モノクロで撮られた『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を指しているようだが、ユーモアの味が似ているかも。ジム・ジャームッシュは本作でカンヌ映画祭1984「カメラ・ドール」新人監督賞を受賞した。比較的ロード・ムービーは好まれるが、窮地に陥ってもタオルを投げないところが魅力なのかもしれない。

 

             ライバル作品は何?

  

オフィシャル・セレクション部門

1)“Carmín tropical リゴベルト・ペレスカノ 10
2 )   Güeros
  アロンソ・ルイスパラシオス   12

3)  “Guten Tag, Ramón”  ホルヘ・ラミレス≂スアレス   6
4)  “La dictadura perfecta”  ルイス・エストラーダ  10

5)  “ Las oscuras primaveras   エルネスト・コントレラス 
 10

 

          

             (リゴベルト・ペレスカノ、モレリア映画祭2014の記者会見にて)

 

★(4)のルイス・エストラーダは既に“El infierno”(2010)と“La ley de Herodes”(1999)で受賞している。本作も辛口コメディ、興行的にも観客の反応はよく成功作のようです。エルネスト・コントレラスはベラクルス生れ、本作は長編第2作目、作品賞のほか監督賞にも選ばれている。モレリア映画祭2014での評価も高く、特にキャスト陣がよく、下馬評では女優賞のイレーネ・アスエラ、助演女優賞のセシリア・スアレス、新人男優賞のハイデン・マイヤーベルクは受賞圏内にいるとか。リゴベルト・ペレスカノの(1は、モレリア映画祭2014の作品賞を受賞している。本映画祭はメキシコ映画祭の老舗グアダラハラを抜いて最近では重要度が増している。ここでの作品賞受賞は大きいインパクトになる。作品賞のほか監督賞・オリジナル脚本賞、助演男優賞にルイス・アルベルティ、他はオリジナル作曲賞・撮影・編集・録音など技術部門が多い。(3)のホルヘ・ラミレス≂スアレスはプロデューサーとして出発、監督デビューは1995年のコメディ“Morena”、本作は4作目、作品賞のほか監督賞にも、かつてノミネーションはあるが受賞はまだ。ラモン役のクリスチャン・フェレルが男優賞にノミネートされている。

 

イベロアメリカ映画賞部門

1)“Conducta” エルネスト・ダラナスキューバ2012
2
)“La isla mínima”  アルベルト・ロドリゲス(スペイン)2014
3
)“Mr. Kaplan   アルバロ・ブレッヒネル Brechner(ウルグアイ=スペイン=ドイツ)2014
4
)“Pelo malo”  マリアナ・ロンドン(ベネズエラ)2013
5
)“Relatos salvajes” ダミアン・シフロン (アルゼンチン=スペイン) 2014

 

                

                         (右側がハコボ役のエクトル・ノゲラ)

 

★(1)はエルネスト・ダラナスが「マラガ映画祭2014」ラテンアメリカ部門の作品賞を受賞した作品。2012年製作の旧作ですがワールド・プレミアは2014年と時間差があります。何しろキューバ映画芸術産業庁ICAICが出資して製作した映画は最近では本作1本しかありません、本当に寂しい限りです。ゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞にもノミネーションされました。そういう意味では(4)のマリアナ・ロンドン映画も2013年製作、サンセバスチャン映画祭2013の「金貝賞」受賞作品ですが、メキシコ・リリースが201411月なので今年ノミネートされました。何しろ本国のベネズエラでさえ国際映画祭で数々の受賞歴を重ねたすえに、やっとこさ20144月に公開されたのでした。ベネズエラの人種差別や格差社会を描いているから権力者には不都合なんでしょう。

アルバロ・ブレッヒネル3)はゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞にノミネーションされたスリラー仕立てのコメディ、75歳のミスター・カプランを演じたエクトル・ノゲラは1937年チリのサンチャゴ生れ、等身大の主人公ハコボに扮した。本作もゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞のノミネーション作品。(2)と(5)は書きまくっておりますので割愛です。後者は日本夏公開が決定しています。

2015年公開映画リストは、コチラ⇒2015323