アントニオ・レシネス*スペイン映画アカデミー新会長 ― 2015年04月03日 12:36
目ぼしい対抗馬がいないのでほぼレシネスに決定!
★去る2月19日、エンリケ・ゴンサレス・マチョが突然の辞任を発表してざわついていたスペイン映画芸術科学アカデミー*も、推薦を受けたアントニオ・レシネスが観念したのか副会長2名を指名して引き受けることにしたようです。目下は厳密に言うと「暫定的な」新会長ですが、新規約では対立者を出さないシステムになったらしくほぼ決定です(立候補届け出締切りは4月1日)。アカデミー会員は約1200人いるが、全員が会費を遅れずに納めているとは限らず、未納だと投票権がない。信任投票みたいなものだから4分の1ぐらいしか投票しないでしょう。レシネスは副会長にグラシア・ケレヘタ監督とプロデューサーのエドモン・ロチを指名してトリオで選挙に臨みます。投票日は5月9日。

(左から、レシネス、ケレヘタ、ロチの3氏)
★2011年4月11日に行われた選挙では、バルセロナ派のビガス・ルナ監督(『ハモン・ハモン』1992)が立候補してゴンサレス・マチョに対戦した。結果は有効投票数357のうちゴンサレス・マチョが256票を獲得、ビガス・ルナは101票で破れた。選挙後もスッキリせずギクシャクが長引いたらしい。そんな経験から対立候補は立てない規則になったのかもしれない。そんなビガス・ルナも2年後の2013年4月6日に癌で旅立ってしまいました。
*AACCE (Academia
de las Artes y las Ciencias Cinematográficas de España) 1986年1月8日設立、初代会長はホセ・マリア・ゴンサレス≂シンデ(1986~88)。任期は3年、2年間は辞任しない決まりだが是々非々で年数は1~6年とバラバラです。大きな仕事はゴヤ賞を組織運営すること、アカデミー賞の代表作品選出など。経験者としてフェルナンド・トゥルエバ、ホセ・ルイス・ボラウ、フェルナンド・レイ、アレックス・デ・ラ・イグレシア、女性ではアイタナ・サンチェス≂ヒホン、マリサ・パレデス、メルセデス・サンピエトロ、アンヘレス・ゴンサレス≂シンデ、彼女は初代会長の娘で任期半ばで第2次サパテロ内閣の文化大臣(2009~11)になった脚本家・監督、「スペイン映画祭2009」で来日しています。トゥルエバ、デ・ラ・イグレシアもラテンビートのゲストとして来日しています。
★前会長ゴンサレス・マチョは「厳密に個人的な」動機が辞任の理由と語っていますが、現在アカデミーの状態が悪くないことも理由に挙げていました。翌日の記者会見で「私は金持ちではないから、自分の仕事もしなければならない」とも説明していたが、激務の割にペイが伴っていないようです。憶測ですけどプロデューサーとしての仕事に専念したいわけです。イマノル・ウリベの“Miel de naranjas”(2012)が最後ですから。片や推薦されたレシネスは、「これは面倒なことになったよ、任期満了前の選挙に呼び出されたんだから・・・」と。でも年貢の納め時、もう後戻りはできません。

(エンリケ・ゴンサレス・マチョ)
★アントニオ・レシネス(1954、カンタブリア)は、1980年フェルナンド・トゥルエバの“Opera prima”でデビュー、マリオ・カムス『蜂の巣』、デ・ラ・イグレシア『アクション・ミュタンテ~』、リカルド・フランコ『エストレーリャ』(ゴヤ賞主演男優賞)、再びF・トゥルエバ『美しき虜』(ペネロペ・クルスがゴヤ賞主演女優賞)、エンリケ・ウルビス『貸し金庫507』、ダニエル・モンソンの『プリズン211』など日本でも認知度はそれなりにあります。

★グラシア・ケレヘタ(1962、マドリード)は、“15 años y un día”がゴヤ賞2014の作品賞他7部門にノミネーションされたとき紹介記事をアップしました。また新作“Felices 140”が間もなく4月10日に封切られます。マリベル・ベルドゥ主演の辛口コメディ。

(新作撮影中のマリベルとケレヘタ監督)
★スペインでも知名度抜群と言えないのがカタルーニャ出身のエドモン・ロチ(1970、ジローナ)、製作者、脚本家、監督。“Garbo:El espía”でゴヤ賞2010最優秀ドキュメンタリー賞、ガウディ賞2010最優秀ドキュメンタリー賞など受賞、他に“Las aventuras de Tadeo Jones”でゴヤ賞2013最優秀アニメーション賞を受賞しています。『エル・ニーニョ』でもゴヤ賞2015プロダクション賞とガウディ賞を共同で受賞しています。レシネスもバルセロナ派から一人選んでバランスをとったのでしょう。

(共同受賞者トニ・ノベリャとエドモン・ロチ、ゴヤ賞2015授賞式にて)
関連記事*管理人覚え
*エンリケ・ウルビス『貸し金庫507』はコチラ⇒2014年6月25日
*ゴヤ賞2014の記事はコチラ⇒2014年1月12日/1月26日/2月6日
*新作“Felices 140”の記事はコチラ⇒2015年1月7日
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