第1回ガルシア・マルケス短編小説賞にギジェルモ・マルティネス2014年11月24日 18:17

★新しい文学賞「ガルシア・マルケス短編小説賞」の第1回受賞者が、アルゼンチンの小説家で数学者のギジェルモ・マルティネスの“Una felicidad repulsiva”(2013、プラネタ社、アルゼンチン)に決定、去る1121日、コロンビアの首都ボゴタで授賞式がありました。コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領よりトロフィーが手渡されました。ガルシア・マルケスのコロンビアでの国葬に拘った少々目立ちたがり屋の大統領ですね。

Premio Hispanoamericano de Cuento Gabriel Garcia Marquezが正式名称、今年417日にメキシコ市の自宅で亡くなった『百年の孤独』の著者、コロンビアのノーベル賞作家に因んだ文学賞。ラテンアメリカ諸国とスペインで出版された短編小説に与えられる。コロンビア文化省・国立図書館、及びスペインのセルバンテス協会が主催、賞金は10万ドル(8万ユーロ)。

 

         

     (フアン・マヌエル・サントス大統領と受賞者ギジェルモ・マルティネス)

 

★ガルシア・マルケスは1947年の“La tercera resignación”の出版以来、40作以上の短編を書いていたそうで、短編というのは「日常生活での飾らない人間の本質に手を加えずに描くことができるジャンル」と語っていた由。短編は重要だと分かっていても売れないから、出版社はどうしても敬遠する。その短編に光を当てた賞がやっと登場しました。選考委員は、委員長にスペインの作家クリスティナ・フェルナンデス・クバス、コロンビアの風刺作家でジャーナリストのアントニオ・カバジェロ、エルサルバドルのオラシオ・カステジャノス・モヤ、アルゼンチンのメンポ・ジアルディネッリ、メキシコのイグナシオ・パディジャの5人。

 

★最終選考5作品に残った作家と作品:

カロリーナ・ブルック(アルゼンチン)“Las otras

エクトル・マンハレス(メキシコ)“Anoch dormí en la montaña

オスカル・シパン(西)“Quisiera tener la voz de Leonard Cohen para pedirte que te marcharas

アレハンドロ・サンブラ(チリ)“Mis documentos

ギジェルモ・マルティネス 省略

以上は、ラテンアメリカ諸国、スペインで刊行された123作品から選ばれた5作品。

 

受賞作Una felicidad repulsiva”は、23ページの短いものから50ページを越える11作で構成されている。審査委員によると、「思慮の錯乱、偶然がなせる不遇、悪夢を引き離して、繊細なスタイルに溢れている」。また「確固として繊細、そして調和がとれていて、このジャンルを見事に手中にしている」短編集、「日常生活から端を発した不条理なもの、恐怖や幻想性、予期しないものに完璧な手さばきで特殊な視点を反映させた作品」ということです。

ギジェルモ・マルティネスによると、10年間に書きためていた作品で、共通しているのはサスペンスものが多い。「日常生活を描いた物語ですが、ある瞬間に忍びよる不運、悪夢、狂気、ふっと過ぎっていく恐怖」が描かれていると語っている。短編集には、トロツキーの最後の一日について書いたものや、光に当てないで息子を育てている過保護な母親の話、などが入っている。

 


ギジェルモ・マルティネス Guillermo Martínez1962年、ブエノスアイレス州バイア・ブランカ生れ、作家、数学者、文芸評論家。14歳のときから書きはじめたという早熟な少年だが、「私の最初の文学の師は、最近亡くなった父親です。私たち兄弟に本を読むことの大切さや楽しさを教えてくれたから」とインタビューに答えています。

  

1984年、国立スール大学数学科卒、1992年、ブエノスアイレス大学で数理論理学の博士号取得、国立学術技術研究審議会の奨学金を得て、オックスフォード大学大学院に留学した。2002年、アイオワ大学の国際作家プログラムに参加した。アルゼンチンの最優秀小説家5人の1人に選ばれている(200407年)。 


  *主な小説と短編集

1989Infielno grande”短編集(レガサ社、アルゼンチン/2001、デスティノ社、西)

1993Acerca de Roderer (プラネタ社、アルゼンチン/1996、デスティノ社、西)

1998La mujer del maestro”(プラネタ社、アルゼンチン/1999、デスティノ社、西)

2003Crímenes imperceptibles”(プラネタ社、アルゼンチン2004デスティノ社、西

Los crímenes de Oxford”に改題)

2007La muerte lenta de Luciana B”(プラネタ社、アルゼンチン/同、デスティノ社、西)

  『ルシアナ・Bの緩慢なる死』(2006、扶桑社、和泉圭亮訳

2011Yo también tuve una novia bisexual”(プラネタ社、アルゼンチン)

2013Una felicidad repulsiva 短編集(プラネタ社、アルゼンチン)

他に文芸評論“Borges y la matematica”(2003)、他

 

アレックス・デ・ラ・イグレシア『オックスフォード連続殺人』08)を見た人でも、オリジナル・タイトルがギジェルモ・マルティネスの“Crímenes imperceptibles”だというのは、推理小説ファン以外は御存じないかもしれない。上記したように2004年にスペインのデスティノDestino社から出版されたとき“Los crímenes de Oxford”と改題され、映画もこちらを採用、日本で翻訳されたときの邦題も『オックスフォード連続殺人』(06、扶桑社、和泉圭亮訳)で出版されました。本作は現在37の言語に翻訳されている本格的なミステリー小説。
(写真下は映画のポスターから)

 

      
   (イライジャ・ウッド、レオノル・ワトリング、ジュリー・コックス、ジョン・ハート)