バヨナ監督『インポッシブル』の次回作は『怪物はささやく』に決定2014年03月17日 00:24

フアン・アントニオ・バヨナの次回作は、ベストセラー作家パトリック・ネスの小説A Monster CallsUn monstruo viene a verme)の映画化に決定しました。癌で夭折したシヴォーン・ダウドの原案をパトリック・ネスとイラストレーターのジム・ケイが完成させたもの。原作は既に『怪物はささやく』の邦題で、児童図書出版社から刊行されております(2011あすなろ書房)。まだキャストはアナウンスされておりませんが、今秋にはクランクインということですからいずれ発表されるでしょう。言語は残念ながら英語です。国際派の俳優を起用ということですが、スタッフは以前と同じ仲間で構成、製作者はアパッチ・エンターテインメントのベレン・アティエンサ、まずイギリスで撮影、後にスペインでも撮るということです。2016年秋公開を目指しており、配給会社はスペインではユニバーサル・ピクチャー、アメリカはフォーカスとライオンズゲイトなど。公開が期待できそうですが、邦題がこの通りになるかどうか、一応翻訳書に合わせておきます。

 


原作のストーリー イチイの大木の怪物と13歳のコナー少年のファンタジー・ドラマ。両親は離婚して父親はアメリカで新しい家族と暮らしている。少年は癌と闘っている母親と一緒に暮らしており、学校ではイジメに合って孤立している。ある夜、怪物が少年の家にやってきて、「私が先に三つの物語を語ります。それが終わったら君が四つめを語りなさい。その物語は君が心に閉じ込めている真実の物語でなければならない。なぜなら君は語るために私を呼んだのだから」と。

 

  

★辛い現実から逃避して心を閉ざしている少年が、真実の物語を語ることができるのか。バヨナがこのファンタジーをどのように映画化するのか大変興味があります。「この小説を読んだとき、映画にしてくれ、と本が自分を呼んでいるように感じた」と監督。また自分にとって『怪物はささやく』は、現実世界に立ち向かうのにファンタジーは必要だと教えてくれたエモーショナルな物語でもあると。第1作『永遠のこどもたち』、第2作『インポッシブル』、ともに母と子をテーマにしており、これで「母子三部作」は終りにするつもりだとも語っています。

 

    
(『インポッシブル』 撮影中のバヨナ監督)

★第2作『インポッシブル』は歴史に残る興行成績を上げ、危機に瀕しているスペイン映画界の救世主となりました。キャストにナオミ・ワッツやユアン・マクレガーなど大物ハリウッド・スターを起用できたことも成功の一つだった。今回も国際派の俳優から選ばれる可能性が高く、まもなく発表されるようです。イメージ的には、スパイク・ジョーンズが2009年に実写で撮った『かいじゅうたちのいるところ』(日本公開2010)に近いのだろうか。最近亡くなったモーリス・センダックのベストセラー絵本Where the wild things areの映画化、1963年の刊行以来、全世界でトータル2000万部以上、日本でも神宮輝夫の名訳でミリオンセラーですね。読んだときに大人になっていた人、子供のときに大人に読んでもらった人、みんなドキドキワクワクした絵本です。

 

★バヨナは、ブラッド・ピットが主演したゾンビ映画『ワールド・ウォー Z』(Guerra mundial Z)の続編を撮ることが決まっておりましたが(既に二人は顔合わせをしている)、これは第4作にまわるようです。日本でも昨年6月に劇場公開された第1作は、ブラビの数多くのヒット作の中でも最大だったとか。悪口も聞こえてきた割には興行収入が何百億円とか信じられない数字、桁が違うのではないかと思ってしまいます。『怪物はささやく』も製作費2500万ユーロをつぎ込むそうで、失敗は許されないか。若くして映画部門での「国民賞」を戴き順風満帆です。「へえ、あの人スペイン人だったの」などと、スペイン人は海外で仕事をする人の足を引っ張りがち、度量を大きく持ちたいものです。