『クリスタル・フェアリー』セバスティアン・シルバ*第10回LBFF② ― 2013年09月25日 09:54
★今回、『マジック・マジック』と2作も上映され、シルバ・ファンとしては嬉しいことですが、これは異例のことですね。両方とも2013年の製作ですが、まずシルバ第1弾として先に完成した『クリスタル・フェアリー』からご紹介し、続いて『マジック・マジック』の順番にします。どうやって2作を並行して撮れたのかしら。
*監督紹介*
★セバスティアン・シルバSebastián
Silva:監督、脚本家、アーティスト、歌手他。1979年サンティアゴ生れ。7人兄弟の2番目。サンティアゴのカソリック系のベルボ・ディビノVerbo Divino高校で学んだ後、チリ映画学校に入学(1998~2000)、その後モントリオールのマギルMcgill大学(英語学校)で上級英語、フランス文化学院でフランス語を学ぶ。更にトーマス・ウェルズが主宰するアニメーションのワークショップに参加。2003年にカソリック大学で映画史、映画脚本のクラスをペドロ・ペイラーノPedro Peiranoと取る(ペイラーノはシルバと同郷の脚本家。デビュー作以来第3作まで共同脚本を手掛けている。ララインの『No』も担当)。オーディオビジュアルのアーティストとしては、画家、デザイナー、ビデオ作家でもあり、バンドCHC、Yaia、Los Monosなどの作曲家、歌手、ギタリストでもあった。2010年に本拠地をニューヨークのブルックリンに移し、チリとアメリカを往復している。「私はチリではアウトサイダー、18歳の時にチリを後にした。これからは英語映画にシフトしていくだろう」と語っているので、スペイン語映画ファンには寂しいかも。チリを舞台にするのは製作費が安いからでしょう。
*フィルモグラフィー*
2007“La
vida me mata”監督・脚本、スペイン語
2009“La nana”『家政婦ラケルの反乱』同上、スペイン語、Altazar監督賞受賞、2010年ゴールデン・グローブ賞ノミネート。
2010“Old
Cats”(“Gatos viejos”)同上、ペドロ・ペイラーノ共同、スペイン語
2013“Crystal Fairy”『クリスタル・フェアリー』同上、英語/スペイン語、サンダンス2013ワールド・プレミア、監督賞受賞。アドベンチャー・コメディ、USA/チリ
2013“Magic Magic”『マジック・マジック』同上、サンダンス出品、英語/スペイン語、カンヌ監督週間出品、サイコ・スリラー、チリ/USA
*2012年には“The Borring Life of Jacqueline”というTVシリーズ(10話)を監督している。
*英語映画になるが、“Nasty Baby”と“Second Child”が進行中である。前者はブルックリンに住んでいるホモセクシュアルなカップルが、二人のベストフレンドに人工授精してもらって子供を持とうとする話、彼自身も出演する。
彼は既にカミングアウトしているので自身の体験が盛り込まれているようです。後者は第4作として出演者のオーデションまでしていた作品。第4作が『クリスタル・フェアリー』と聞いて頓挫したのかと思っていました。子供たちが主役のアドベンチャーもの。ラライン兄弟が設立したFábulaプロの製作。ラライン兄弟はデビュー作当時からの友人。

*『クリスタル・フェアリー』キャスト&トレビア*
★マイケル・セラ(ジェイミー)/ガブリエル(ガビィ)・ホフマン(クリスタル・フェアリー)/フアン・アンドレス・シルバ(チャンパ)/ホセ・ミゲル・シルバ(レル)/アグスティン・シルバ(ピロ)/セバスティアン・シルバ(ロボ)他
★キイワード:砂漠/幻覚剤/サボテン/シャーマニズム/ロード・トリップ
★ジャンル:アドベンチャー・コメディ
★『JUNO/ジュノ』がブレークしてメジャー入りしたマイケル・セラが、どうしてシルバの映画に出ることになったのか。監督が語るところによれば「ニューヨークのイースト・ビレッジで雨に降りこめられたマイケルが、雨宿りに映画館に入ったら『家政婦』をやっていた。えらく気に入ってロスにいた私を訪ねてきたんだ。それがそもそもの出会い」。たちまち意気投合して出来たのが『クリスタル』だというから運命の出会いだった。当時マイケルは自分に貼られたステレオタイプ的なレッテル剥がしをしたがっていた。撮影前に先にサンチャゴ入りしたマイケルは、シルバの両親の家から語学学校に3カ月通ってスペイン語を勉強した。映画の中で彼のチリ弁が聞けるのかな。
★LBFFサイトの解説で「悪友」と書かれた三人組チャンパ、レル、ピロは監督の兄弟たち、家族ぐるみの協力で出来た映画、監督自身も“Nasty Baby”同様出演しています。監督の20歳ごろの体験がベースになっているということですから、彼自身がジェイミーに投影されている。実際の道連れは友人一人であったが、映画では三人の兄弟が連れ添った。
★ストーリーは、A地点からB地点に移動するハリウッドによくあるロード・トリップ、ハリウッドと違うのはこっそり盗んだ車で出掛けない、やたら走り回らない、馬上でジャンプしない、出掛ける先は宇宙ではなくチリ北方の砂漠である。実にシンプルですよね。どうしてアメリカの若者が面白がったのでしょう。なにか秘密が隠されている?
★映画の拠点はアメリカに移したけれども、「資金提供をしてくれた製作者フアン・デ・ディオス・ララインとパブロ・ラライン監督には感謝の言葉もない」と語っている。チリでの公開(10月3日)にも尽力してくれたようです。撮影はたったの12日間(!)、フィルム時代にはとても考えられない電光石火の早や業です。『家政婦』も確か2週間ぐらいだった。
(写真;左からセラ、ホフマン、監督)
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