ボラーニョの小説、初めて映画化2013年08月23日 08:41

ボラーニョの小説、初めて映画化
★残念ながら話題の長編大作『2666』でも『野生の探偵たち』でもありませんが、ボラーニョの小説“Una novelita lumpen”が“Il futuro”(El futuro)のタイトルで映画化されました。映画祭は364日どこかで開催されているのではと錯覚するほど多い。今年2013年もサンダンス映画祭で幕開けいたしました。英題“The Future”の世界プレミアはこのサンダンス、続くロッテルダム映画祭ではKNF作品賞を受賞いたしました。監督はボラーニョの生れ故郷チリのアリシア・シェルソン。チリ、イタリアでは6月に劇場公開も果たし、アメリカとドイツでも9月公開が決まっています。

*アリシア・シェルソンといえば、長編第1作『プレイ/Play』(2005)で才能を開花させた新世代の監督。こちらの映画は本当に掘出し物でした。埼玉県川口市で開催された「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006」で新人監督賞を受賞した作品。好評につき東京国際映画祭2006でも上映され、さらに2008年6月にはセルバンテス文化センター土曜映画会でも上映されました。躍進目覚ましいチリ映画界、なかでもクールな新世代の活躍は目を見張るものがあります。

*シェルソンの第4作目になる本作は、製作国がチリ、イタリア、ドイツ、スペインの4カ国、言語がイタリア語、スペイン語、英語と複雑なのも話題になっています。主役のビアンカ役に『マチェカ』や『サンチャゴの光』出演のマヌエラ・マルテッリ(1983年サンティアゴ生れ。名字からも分かるように両親はイタリア系移民なので、西伊のバイリンガル。イタリア映画祭2009上映のサルヴァトーレ・メレウの『ソネタウラ・樹の音』にも主演しているから認知度は高い)。相手役にリドリー・スコットのヒット作『ブレード・ランナー』でレプリカントに扮したルトガー・ハウアーという異色の顔合わせ、ワクワクせずにはいられません。YouTubeで予告編が覗けます。いずれ鑑賞できたら感想をアップします。
(写真:アリシア・シェルソン)

★ロベルト・ボラーニョの原作”Una novelita lumpen”(2002)は、同郷のホセ・ドノソの小説”Tres novelitas burguesas”へのオマージュとして付けられた由。ボラーニョ生前最後の単行本、没後出版の『2666』同様幼い二人の愛児ラウタロとアレクサンドラに捧げられています。因みにホセ・ドノソの小説は、木村榮一訳『三つのブルジョワ物語』として集英社文庫に入っています。これに倣えばさしずめ「あるルンペン物語」とでも訳せましょうか。
*「チリの作家」と紹介されるボラーニョですが、彼自身は生前「チリ人でもメキシコ人でもスペイン人でもなく南米の作家、ラテンアメリカの作家です。スペインのカタルーニャの小村ブラネスにずっと住みつづけていたいと思うけど」と語っています。今年7月15日はボラーニョ没後10周年(1953~2003)、生きていれば還暦を迎えていたのかと感無量です。当時13歳だったラウタロも大人になり、2歳足らずだったアレクサンドラもローティーンだ。そういえば、謎の作家アルチンボルディを追う長編『2666』のハンスとロッテのライター兄妹も10歳違いでした。

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